2018年10月18日
サマリー
◆今後の消費者物価の動向を展望する上で、①2019年10月に予定されている消費増税、②今春以降の原油高、という2つの物価押し上げ要因に対する注目度が急速に高まっている。そこで、本稿では、これらの要因が消費者物価指数(CPI)に与える影響度を試算するとともに、デフレ脱却とインフレ目標へのインプリケーションについて検討することにしたい。
◆消費増税および幼児教育無償化の影響は、一時的な特殊要因として除かれた上で、CPIの基調判断が行われると想定され、政府のデフレ脱却と、日本銀行の2%のインフレ目標に対して直接的な影響は及ぼさない。他方、消費増税後に、政府が重視するGDPギャップが想定外に下振れすれば、「デフレ脱却宣言」が遠のくことになる。
◆2018年春以降の原油価格上昇(約20%)の影響が全て顕在化すると、コアCPI(前年比)は、①エネルギー代経由の直接効果で+0.29%pt程度、②経済構造を踏まえた全効果で+0.37%pt程度、押し上げられる見込みだ。つまり、明確な物価押し上げ効果をもたらし、波及ラグを踏まえると、当面その影響が継続すると考えられる。ただし、エネルギーを除く新コアコアCPIへの影響度が、コアCPIより小さくなっていることなどを総合的に勘案すると、現時点では、デフレ脱却や2%のインフレ目標の実現までには至らないとみている。
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