4年を迎える大胆な金融緩和の「光」と「影」
~是清を超える異次元の領域へ~『大和総研調査季報』 2016年秋季号(Vol.24)掲載
2016年12月01日
サマリー
現在、政府の掲げる「デフレ脱却」や日本銀行の2%のインフレ目標が正念場を迎えている。本稿では、「大胆な金融緩和」の4年間の特徴を「光」と「影」の両面から整理しつつ、今後の課題について分析した。
大胆な金融緩和を概観すると、全ての始まりは2012年11月15日、自民党の安倍晋三総裁による金融政策を巡る発言にまでさかのぼることができる。その後、10年国債利回りがマイナスを記録するなど大きな衝撃波となった。
4年間のコアCPIの動向を総括すると、最初の2年間はインフレ目標の達成に向けて着実に進んでいたが、その後、風向きが急変してインフレ目標から徐々に後退してしまったと整理できる。
国債の保有額や購入割合という観点からみると、日本銀行による大量の国債購入は、「実質的な直接引受け」のような状態だと言える。しかし、周知の通り、現在、日本銀行は法律に従って国から国債を直接購入しておらず、直接引受けには該当しない。
今後の金融政策の優先課題としては、①長期戦に向けた金融政策の枠組みの再構築、②サプライズから対話路線へのシフト、③大胆な金融緩和の副作用に関する丁寧な説明——の3つが指摘できる。
大和総研 調査本部が、その長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、経済、金融資本市場及びそれらを取り巻く制度を含め、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
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