サマリー
◆原油価格の大幅な下落は、世界経済及び金融資本市場に様々な影響を及ぼすだけではなく、エネルギー輸入価格の下落を通じて、わが国の最優先課題である「デフレ脱却」の実現を大きく後退させる要因ともなり得る。本稿では、2014年の原油市場の動向を概観することによって原油価格が急落した背景を整理するとともに、原油価格の下落がわが国の消費者物価に及ぼす波及経路や影響度について考察する。
◆原油価格の推移をドバイ原油現物価格とWTI原油先物価格によって確認すると、2014年前半は、いずれも高値圏での推移が続き、6月に年初来高値を記録した。2014年後半の原油価格急落の要因としては、(1)地政学的リスクの緩和、(2)世界経済の減速に伴う需要減少懸念、(3)原油産出国の減産に対する消極姿勢が供給過剰懸念を強めたこと、(4)商品市場から通貨ドルへの投資資金の流出、が挙げられる。
◆原油の国際市況価格の下落は、原油輸入価格と液化天然ガス(LNG)の輸入価格を下落させ、その後は、主に以下の3つの波及経路を通じて、消費者物価指数に影響を及ぼす。まず、家計のエネルギー購入価格が低下して、直接的に消費者物価指数を押し下げる。次に、企業の中間投入コストが減少するとともに、最終消費財の販売価格の値下げが進み、これらが消費者物価指数に対してマイナスに作用する。最後に、家計の実質購買力の高まりや企業収益の増加、交易条件の改善などを通じて、実体経済やマクロの需給バランスが改善する。このため、中期的には、この経路から消費者物価指数に上昇圧力が生じることになる。
◆原油価格の下落から消費者物価指数への波及経路を踏まえると、まず検討しなければならないことは、家計側の経路を通じた影響の大きさである。今回の試算結果に基づくと、原油価格が10%下落すると、エネルギー価格は、「コアCPI(生鮮食品を除く総合)」を▲0.18%pt程度押し下げる。原油価格は6月の高値から約5割下落しており、その影響が全て顕在化すると、コアCPIは▲0.91%pt程度も押し下げられることになる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2026年4月全国消費者物価
高校授業料や小学校給食費の実質無償化によりサービス価格が抑制
2026年05月22日
-
2026年4月貿易統計
中東情勢の影響が数量・価格両面で本格化も収支黒字が継続
2026年05月21日
-
2026年3月機械受注
船電除く民需は前月の反動で減少したが、複数の大型案件が下支え
2026年05月21日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
いまさら人には聞けない 大量保有報告(5%ルール)のQ&A 【改訂版】
2024年金商法等改正法(2026年5月1日適用開始)を反映
2026年04月03日
-
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
-
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
-
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
いまさら人には聞けない 大量保有報告(5%ルール)のQ&A 【改訂版】
2024年金商法等改正法(2026年5月1日適用開始)を反映
2026年04月03日
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日

