2014年10月23日
サマリー
◆ASEANは経済共同体(AEC)の創設に向けて、金融資本市場の統合への取組みを行っている。もっとも、統合といってもASEAN域内各国の金融資本市場が全く一つの市場として統合されるわけではなく、主に各国の規制等の調和化・相互承認が行われる。
◆この取組みは様々な障壁を低くして、域内でクロスボーダーでの投資や資金調達を容易にする可能性を秘める一方で、域内各国の取引所間・資本市場間の競争激化を意味する。
◆規制等の調和化、相互承認によって、投資家はどこの国で投資をするのか、企業はどこで資金調達をするのかという選択肢が増えるため、投資家と企業に、より魅力的な環境を整えることができた取引所・資本市場が投資・資金調達の場として選ばれるためだ。
◆取引所間で競うことになる点は基準の調和化・相互承認が行われる以外の部分(規制等の強弱、コスト、多様な投資家層など)となり、それが投資や資金調達を呼び込む差別化要因になると思われる。
◆本稿ではAEC創設がもたらすASEAN域内各国の証券取引所の競争について考察する。本レポート(上)では、ASEANの金融資本市場統合の概要と進捗状況に言及する。次号(下)では域内各国の証券取引所の現状とその取組みを考察する。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
ASEAN経済統合がもたらす域内証券取引所への影響(下)
証券取引所毎の機能的な棲み分けが進む
2014年12月10日
-
ASEAN経済統合を域内企業はどう見ているのか
ASEAN経済共同体の創設の進捗状況は80%
2014年08月12日
-
ASEAN銀行セクターの自由化・統合の取組み
道のりは長いが、後発ASEAN の銀行セクター発展には必要な取組み
2013年08月12日
同じカテゴリの最新レポート
-
日銀のETF売却とスチュワードシップ責任
超長期投資家となる日銀のスチュワードシップ責任の果たし方
2025年09月26日
-
日本銀行がETF・J-REITの市場売却を決定
100年以上かけた超長期売却計画には備えが必要
2025年09月22日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日