デジタル給与解禁と労働者保護を巡る課題

そもそも、なぜ賃金の支払い方法が拡充されてきたのか?

RSS

サマリー

◆デジタル給与払いが2023年4月1日に解禁される。労働者の賃金支払い方法が増えるのは、1998年9月以来、約24年半ぶりだ。デジタル給与払いにより、賃金を起点とした国内の資金フローや金融ビジネスにどのような影響が生じるか等について、世の中の関心も高まっている。

◆デジタル給与の議論は、主に外国人労働者向けの「ペイロールカード」の議論から発展した。実際に、デジタル給与の導入に向けた動きが本格化し始めたのは2021年に入ってからだ。実務的な対応などを踏まえると、現実的に労働者がデジタル給与を受け取れるようになるのは、解禁されてから数ヵ月以上先になる可能性もある。

◆賃金支払い方法が拡充されてきた背景として、①労働者の利便性向上、②金融包摂の向上、③賃金の強盗・窃盗、紛失対策、④「Level Playing Field(公正な競争環境)」の整備や民間のイノベーション促進、が挙げられる。他方、課題としては、資金移動業者の破綻や不正利用時における資金保全と換金性確保といった労働者保護が重要だ。

◆労働者保護の問題については、様々な対応策が講じられることになった。例えば、資金移動業者は、事前に労働者保護や報告体制などに関する8つの要件等を満たした上で、厚生労働大臣の指定を受けなければならない。実際に労働者保護の対応策がしっかり機能し、実効性のあるものになっているか慎重に見極めていくことが欠かせない。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者のおすすめレポート