民間団体による情報銀行の認定がスタート

実効性を伴う認定は指針ver2.0以降から

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サマリー

◆三井住友信託銀行株式会社及びフェリカポケットマーケティング株式会社(イオン子会社)が、2019年6月、民間企業で初めて、一般社団法人日本IT団体連盟から、情報銀行の運営計画がサービス開始に際し一定の水準を満たしているとの認定を受けた。ただ、この認定をもって、両社の情報銀行の開業に向けた準備が、他社と比べ大きくリードしていると評価することは必ずしもできないだろう。

◆理由は3点考えられる。第一に、情報銀行の開業に際し、日本IT団体連盟のような民間団体の認定を受けるかどうかは、企業の任意とされているからである。第二に、日本IT団体連盟による認定はマネジメントの実施状態に関するものであり、その認定の対象範囲は限定的であるからである。第三に、日本IT団体連盟による認定は、総務省・経済産業省の認定指針に基づき行われているが、今回は指針のver1.0 に基づく認定であり、金融データの取扱いや個人情報の加工などに関する事項がそもそも審査や認定の範囲外だからである。

◆情報銀行の認定指針は、近日中にver2.0の公表が予定されており、それ以降はver2.0に基づき認定が行われることになる。指針ver2.0で新たに追加される見込みの10項目を見ると、情報銀行のサービス内容及びビジネスモデルの検討に影響をもたらす内容が多い。情報銀行の定義が拡大されることで、従来想定されていたよりも多くの民間企業にとって、情報銀行がビジネスの選択肢となる可能性が出てきた。

◆情報銀行の事業への参入を検討している銀行グループには、銀行法等の法規制の問題もある。この点は、2019年5月31日に成立した「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」において、顧客に関する情報の同意を得て第三者に提供する業務等を金融機関の業務に追加する旨が盛り込まれ、1年以内の施行を待つのみとなった。現状、銀行グループの情報銀行への取組みは横一線とみられるが、法律施行と同時に、どこの銀行グループが最初に開業するのか、動向が注目される。

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