2019年07月25日
サマリー
◆三井住友信託銀行株式会社及びフェリカポケットマーケティング株式会社(イオン子会社)が、2019年6月、民間企業で初めて、一般社団法人日本IT団体連盟から、情報銀行の運営計画がサービス開始に際し一定の水準を満たしているとの認定を受けた。ただ、この認定をもって、両社の情報銀行の開業に向けた準備が、他社と比べ大きくリードしていると評価することは必ずしもできないだろう。
◆理由は3点考えられる。第一に、情報銀行の開業に際し、日本IT団体連盟のような民間団体の認定を受けるかどうかは、企業の任意とされているからである。第二に、日本IT団体連盟による認定はマネジメントの実施状態に関するものであり、その認定の対象範囲は限定的であるからである。第三に、日本IT団体連盟による認定は、総務省・経済産業省の認定指針に基づき行われているが、今回は指針のver1.0 に基づく認定であり、金融データの取扱いや個人情報の加工などに関する事項がそもそも審査や認定の範囲外だからである。
◆情報銀行の認定指針は、近日中にver2.0の公表が予定されており、それ以降はver2.0に基づき認定が行われることになる。指針ver2.0で新たに追加される見込みの10項目を見ると、情報銀行のサービス内容及びビジネスモデルの検討に影響をもたらす内容が多い。情報銀行の定義が拡大されることで、従来想定されていたよりも多くの民間企業にとって、情報銀行がビジネスの選択肢となる可能性が出てきた。
◆情報銀行の事業への参入を検討している銀行グループには、銀行法等の法規制の問題もある。この点は、2019年5月31日に成立した「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」において、顧客に関する情報の同意を得て第三者に提供する業務等を金融機関の業務に追加する旨が盛り込まれ、1年以内の施行を待つのみとなった。現状、銀行グループの情報銀行への取組みは横一線とみられるが、法律施行と同時に、どこの銀行グループが最初に開業するのか、動向が注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
2019年度、情報銀行が本格開業へ
金融機関、広告、情報通信等、各業界大手が続々と参入表明
2019年06月25日
-
2022年から本格始動 日本のデータ連携活用基盤
産業構造が変わる可能性 企業の準備は進んでいるか
2019年04月15日
-
GAFAが異業種分野への進出を加速
狙いは各産業のリアルデータ収集
2019年02月26日
-
GAFAの台頭 世界でデータをめぐる競争が激化
本格的な勝負はこれから 日本はどう立ち向かうか
2018年11月16日
同じカテゴリの最新レポート
-
金利上昇下における預金基盤の重要性の高まり
~預金を制するものは金融業界を制す~『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
地方銀行の越境再編
その土台にある地域経済圏の再構築
2025年07月11日
-
ステーブルコイン推進へ舵を切る米国(後編)
GENIUS法案は如何にして米ドルの支配的地位を補強するか
2025年06月13日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日