2019年06月25日
サマリー
◆「21世紀の石油」と評される個人データを管理し利活用する社会的な仕組みとして、2017年以降、日本でも、政府後押しのもと、情報銀行の設立に向けた検討が進められてきた。海外に比べ遅れが目立ったが、今年度、一気に取組みが進む見通しである。
◆2019年度、いよいよ大企業による情報銀行が開業する。現段階で、情報銀行への参入を正式表明している大企業は、情報通信企業ではNTTデータを始めとする5社、金融機関では3大メガバンクを始めとする4行、マーケティング関連企業では電通グループ、である。今年度以降の情報銀行の開業に向けた準備を進めている。これらの企業の取組みを筆頭に、旅行、電力、放送等の特定の産業分野における個人データの利活用を目指した情報銀行も、各業界の大企業により、幾つか誕生していくとみられる。
◆情報銀行に準ずるとして注目されている事業に、複数の個人データを用いて信用スコアを作成する信用スコアリング事業がある。個人データの収集・蓄積を行う点で、情報銀行と共通している。信用スコアリング事業には、キャッシュレス決済事業者(情報通信企業)、金融機関が積極的に参入している傾向がみられる。
◆情報銀行の構想内容の傾向をみると、情報銀行が取り扱う個人データとしては、行動データ、金融データを検討しているケースが多い。個人に支払う情報対価については、金銭や割引等の経済対価よりも、仮想通貨及び情報を検討するケースが多い。情報銀行のマネタイズに向けて、個人データの収集に際し、情報銀行に関連する周辺事業も含めた事業全体で個人の利用価値を高める仕掛けが模索されている。
◆情報銀行への参入企業の傾向から浮き彫りになるのは、今後激化が予想される、金融業界における金融機関vs 情報通信企業の勢力争いである。情報銀行は、金融再編の序章と考えられよう。
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