スマートメーターとは、双方向通信機能を持つ電力やガスなどの計量機器のことである。狭義の場合、遠隔検針や遠隔開閉(※1)など、電力会社などとメーター間のデータ送受信を行う機能を持つものを指す。広義の場合、狭義の機能に加えて、家庭内の機器とも双方向通信し、機器制御ができるものを指す。
現在の家庭内の電力メーターは、累積の消費量を計測する機能しかないものがほとんどである。日本の場合、検針員が月に一度、メーターの数値を目視で確認し、前月との差を計算して請求するため、今どのくらい使っているかなどを需要家が知ることができない。スマートグリッドでは、効率よく需給バランスをとるために、需要側と供給側の情報を双方向で管理・制御することが重要とされており、その要となる機器の一つがスマートメーターである。
日本では、経済産業省に設置された「スマートメーター制度検討会」で、スマートメーターによる電力情報の取得方法について検討され、3つのルートが示された(図表)。Aルートは、電力会社の持つネットワークかWebを使って、スマートメーターで取得したデータを電力会社に送るルート。電力会社が、ここで取得したデータやデータを加工・分析した情報を、家庭に提供する。Bルートは、スマートメーターとHEMS(Home Energy Management System)をつなぎ、パソコン、専用の表示端末(IHD:In Home Display)、スマートフォンなどで管理・制御する。HEMSは家電、太陽光発電、電気自動車などの「省エネ・創エネ・畜エネ」機器・設備を管理し、機器・設備ごとの電力量監視やオン/オフなどを行うことが想定されている。Cルートでは、データセンターを持つIT企業のような第三者が、電力会社経由やWebを通じてデータを取得する。

世界のスマートメーターの導入状況を見ると、導入が進んでいるのは欧米である。欧州では、正確な検針(※2)と効率化による収益向上・コスト削減とサービス向上、再生可能エネルギーの大量導入などを目的としている。スウェーデンでは導入が完了、イタリアも、ほぼ完了している。「経済的に成立する場合、2020年までに需要家の少なくとも80%に導入」というEU指令を受けて、イギリス、フランス、スペインなどでは導入が義務化されている。ただし、主な目的が月一回の遠隔検針などであり、自動的なデマンドレスポンスを実現するような高度な機能は持っていないものもある。
米国では、老朽化した電力網の更新や需給逼迫への対応、検針コスト削減などを目的とし、カリフォルニア州やテキサス州などが導入に積極的である。
日本では、各電気会社は図表のような導入スケジュールを決定している。2013年暮れの時点では、平成35年度末から平成44年度末を導入完了予定としていたが、スマートメーターの導入効果に対する期待が高まり、前倒しした計画となっている。
なお、スマートメーターとHEMSをつなぐBルートには、東京電力が採用する“ECHONET Lite”という規格の他に、米国の“SEP2.0”や欧州の“KNX”という規格も存在し、国際標準が確立していない状況である(※3)。日本のエネルギー政策の基本理念である3E+S(安定供給、経済性、環境適合性+安全性確保)を実現するためには、どの電力会社のスマートメーターも、地域・国を越えた「標準化」について考慮することが求められよう。

(※1)送電を停止したり再開したりする「開閉」を遠隔操作で行うこと。
(※2)日本と違って、検針が数か月に1回だったり、需要家の自己申告だったりして正確ではない国がある。
(※3)経済産業省「スマートハウス標準化検討会 中間取りまとめ」(平成24年2月24日)では、「日本の強みを活かしつつ、海外規格との融合・連携を進めることが重要」と指摘している。
(2012年7月31日掲載)
(2013年7月23日更新)
(2014年7月28日更新)
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