デマンドレスポンス(DR:Demand Response)は、「需要応答」のことで、電力供給側からの要請によって需要家の電力消費をコントロールすることである。要請に対して需要家は、電力使用を停止する(他の時間帯に使用するようシフトする)か、使用量を控える(エアコンの温度設定を変更する)、などの対応を取ることが期待されている。価格メカニズムを利用するデマンドレスポンスと、需給調整契約などのインセンティブによるデマンドレスポンスに大別される。
価格メカニズムを利用するデマンドレスポンスには、①ToU(Time of Use:季節や時間帯別の料金設定)、②CPP(Critical Peak Pricing:年に数回、需給が逼迫する日の数時間だけ割高な料金を設定)、③RTP(Real Time Pricing:市場や需給予測などに応じた料金を1日前や1時間前などのタイミングで通知)などがある(図表1)。ToUとCPPは、需給逼迫時への対応を主な目的としている。RTPは、ピーク時の需給逼迫を起こしにくくする効果の他に、全体の需給調整が可能という特長もある。②と③は、需給や市場動向に追随するので、ダイナミック・プライシングと呼ぶこともある。また、割高な料金を提示するのではなく、需要を削減した場合に払い戻しをするPTR(Peak Time Rebate)という方法もある。

(出所)大和総研レポート 2011年11月2日 「電力不足解消のカギは家計部門にある 価格メカニズムとスマートグリッドの活用で需要をコントロール」
デマンドレスポンス実施には、電力消費量と電力料金の情報が全ての利用者にとって利用可能でなければならないが、RTPの場合はリアルタイム性が問われるため、スマートメーター等の双方向の通信機能を持った機器が必要となる。またCPPでも、事前に「需給が逼迫すると予想されるため料金が上がる日時」は通知されるものの、自動的に対応(使用の停止や抑制)するためには、電力供給側の情報に応じて自動制御を行うスマート機器(スマートメーター、スマートサーモスタット、スマート家電など)が必要になる。
インセンティブによるデマンドレスポンスは、卸電力価格の高騰時や需給逼迫時に、電力消費を抑える(負荷抑制、負荷遮断)契約を結ぶことにより実現する方法である。こうした需要家による削減量を供給量と見立てて、発電事業者など供給側と市場などで取り引きすることをネガワット(※1)取引という。複数の需要家の需給をとりまとめて取り引きに参加するアグリゲーターというサービスもある(図表2)。
図表2 インセンティブベースのデマンドレスポンスの例

(※1)ネガワットとは、省エネ機器を購入するなど電力需要を削減するのは、その分の発電をしたことと同じ、という考え方。米ロッキー・マウンテン研究所のエイモリー・ロビンズ氏が提唱した概念。
(2013年7月10日掲載)
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