2012年08月08日
サマリー
北九州市のスマートコミュニティ実証実験で、電力需給の逼迫時に電力料金を引き上げて需要を抑えるダイナミックプライシングの実施状況が公表された(※1)。7月に4回実施され、料金変動のあるグループの方が、ないグループより平均で約16%電力使用量が少ないという結果になった(図表)。引き上げ額の大きい日(7月12日)の削減率が必ずしも高いわけではないのは、気温の影響も考えられるが、今後の分析が待たれるところである。
図表 ダイナミックプライシング実施結果

また、大阪ガスと積水ハウスは、実際に3人家族が1年間「スマートエネルギーハウス」に居住した実験で、88%の節電効果、31万円の光熱費削減効果があったと発表した(※2)。この実験では、燃料電池・太陽電池・蓄電池の3電池による最適制御、通風や採光制御を取り入れた自動制御などを導入して、快適性を損なわずに省エネ効果や節電効果を最大化することを目指している。
これらの実験では、電力需給状況とエネルギーに関する料金の見える化や、需給状況や気温などに応じた省エネ・創エネ・蓄エネの自動化が、家庭の省エネに結び付いたと思われる。こうしたことを実現するには、スマートメーターやHEMS(Home Energy Management System)など、ITを活用する環境が必要になる。
エネルギー・環境会議では、今後5年以内に総需要の8割をスマートメーター化する目標(※3)を出したが、これに対する各電力会社の計画は、5割(沖縄電力)から8割(東京電力、中部電力、関西電力)まで、さまざまである(※4)。詳細(※5)を見ると、9電力とも、5年後には高圧部門全体をスマートメーター化するとしているものの、例えば東京電力や中部電力では、低圧部門(家庭など)には平成25年度から10年かけて全戸導入する計画となっている。9電力会社合計では、約7,800万個のメーターがあり、内訳は高圧部門が約75万個、低圧部門が約7,700万個である。このことから、「総需要」の8割であっても低圧部門のメーター数の8割にはならないと思われる。
9電力のピーク需要は約1億8,000万kWで、そのうちの約3分の2が高圧部門、約3分の1が低圧部門とされており(※5)、需要量ということでは低圧部門の割合は小さい。しかし大口部門のように供給側からの強制的な制御や計画的な使用を促しにくいため、自発的、かつ自動で対処できる節電を促す仕組みとして、スマートメーターとHEMSの果たす役割は小さくない。スマートメーターやHEMSの普及に向けた一層の取り組みが望まれる。
(※1)北九州市環境関連報道資料 平成24年7月25日 「北九州スマートコミュニティ創造事業 ダイナミックプライシング(レベル2~5実施後)の状況について」
(※2)大阪ガス プレスリリース 2012年8月2日「『スマートエネルギーハウス』3電池住宅として国内初の長期居住実験を実施 ~年間▲88%の節電、▲103%のCO2排出量削減、▲31万円の光熱費削減効果を実証~」
(※3)国家戦略室 「参考資料2 エネルギー需給安定行動計画 (平成23年11月1日 エネルギー・環境会議)」
(※4)経済産業省 スマートメーター制度検討会(第11回) 2012年3月12日 「資料6 スマートメーター導入に係る電気事業者の取り組みについて」
(※5)経済産業省 スマートメーター制度検討会(第11回) 2012年3月12日 「資料3 スマートメーターの最近の動向について」
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
気候関連開示規則の廃止案を公表:米国SEC
バイデン政権時代に制定されたGHG関連の開示規則は廃止に
2026年06月02日
-
データサイエンスで紐解く健康経営③
健康経営は生産性や収益性に影響するのか、固定効果モデルで検証
2026年06月01日
-
移住労働者を権利保持者として迎える
ポスト技能実習制度の人権尊重に向けた日本企業の責任
2026年05月27日
最新のレポート・コラム
-
2026年5月全国消費者物価
エネルギーのマイナス幅縮小も、食料等の非耐久財の伸び率は縮小
2026年06月19日
-
「食料品の消費税率1%+中低所得勤労者への所得連動給付」案が軸に
先行導入の所得連動給付は年間給与所得対比+0.4%程度の可能性
2026年06月19日
-
中東向け乗用車輸出の激減は日本経済のリスクとなるか
国内販売と他地域向け輸出が生産下支えも、代替ルート開拓が課題
2026年06月19日
-
投資信託へのプライベートアセットの組入れ
制度設計上の論点と欧州・長期投資ファンド(ELTIF)からの示唆
2026年06月18日
-
AIガバナンスの深化とフィロソフィ経営
2026年06月19日
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
コーポレートガバナンス・コードの改訂案が公表
本質的な取組みと丁寧なエクスプレインが期待される
2026年04月27日
-
第229回日本経済予測
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年05月25日
-
変革迫られる学校法人の資産運用
AOP対応は、少子化・インフレの荒波を乗り越えるための第一歩
2026年05月07日
-
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
コーポレートガバナンス・コードの改訂案が公表
本質的な取組みと丁寧なエクスプレインが期待される
2026年04月27日
第229回日本経済予測
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年05月25日
変革迫られる学校法人の資産運用
AOP対応は、少子化・インフレの荒波を乗り越えるための第一歩
2026年05月07日
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日

