2022年11月11日
サマリー
◆本稿では、TOPIX500採用会社のうち、任意開示書類(統合報告書、サステナビリティレポートなど)を発行している企業(439社)の2022年9月末時点におけるTCFDに沿った情報開示の状況を整理し、今後の開示に向けて得られた示唆について述べる。本稿では、TCFDで開示が求められる、気候変動に関する「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」のうち、「戦略」にフォーカスする。
◆「戦略」については、特定した気候関連リスク・機会やその影響(329社)、影響の大きさ(216社)、リスクへの対応策(241社)などを開示している企業が多く見られた。また、シナリオ分析に当たって、外部機関のシナリオを参照している企業も250社あり、特にIPCC(213社)やIEA(200社)のシナリオを利用している企業が多かった。
◆「戦略」に係る情報は、TCFDに沿った開示の中でも特に投資家の投資判断への影響が大きい、核となるものと考えられる。今後、有価証券報告書でサステナビリティ情報の開示が求められる。企業は気候関連リスク・機会を特定し、その影響を考慮した戦略を通じて自社の持続的な企業価値を高めていくことが可能となる。まずはできるところから順に取り組みを進め、投資家に向けた開示を行っていくことが期待される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
TCFDに沿った情報開示の状況(ガバナンス、リスク管理)
TOPIX500採用会社の任意開示書類での気候変動に関する情報開示
2022年11月04日
-
開示府令改正案の概要と今後の展望
有価証券報告書におけるサステナビリティ、コーポレートガバナンスに関する情報開示の拡充
2022年11月10日
-
企業の気候変動情報の開示に関する国際的な基準案が公表
ISSBの公開草案についてQ&A形式で解説②
2022年04月22日
同じカテゴリの最新レポート
-
EUサステナ開示規制の域外適用見直しへ
米国とEUは関税合意の一部としてサステナ開示の域外適用を見直す
2025年09月12日
-
機械学習による有価証券報告書(2025年3月期)の人的資本開示の可視化
経営戦略と人事戦略の連動や、指標及び目標の設定に課題
2025年08月01日
-
サステナビリティWGの中間論点整理の公表
2027年3月期から順に有価証券報告書でのサステナビリティ開示拡充
2025年07月28日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日