2015年02月26日
サマリー
◆運輸部門(旅客部門と貨物部門)のエネルギー消費量は、減少傾向にある。ただし、貨物部門のCO2排出量のほとんどが自動車(トラック)からのものであることから、政府等ではトラックのCO2排出量削減にかかわる取り組みを中心に運輸部門の低炭素化が進められている。
◆CO2排出量を押し上げる要因の一つに、出荷1件当たりの重量(流動ロット)の小ロット化が進んでいることがある。背景には通販市場、宅配市場が成長していることが挙げられる。トラックの中でも宅配便等混載の流動ロットは極めて小さい。
◆今後、食品アクセスに制約のある高齢者(いわゆる買い物弱者)の増加、高齢者や女性の就業率の上昇、スマートフォン普及を背景にした電子商取引(EC)の浸透等から、さらに通販市場、宅配市場が伸びると予想される。温度管理が必要な貨物の増加やC2Cの広がりという消費者ニーズの高度化も、物流のCO2排出量の増加に結び付く可能性がある。
◆こうした状況もふまえ、政府は「総合物流施策大綱(2013-2017)」等の中で、基幹道路の整備の他、共同配送の推進、鉄道へのモーダルシフト、荷捌き場整備等、サプライチェーンのステークホルダーとの協働による効率化を進めている。一方、食品ロスを減らすと共に食品関連の物流の効率化にもなることが期待される3分の1ルールの見直し等、物流業界だけでは実現することができない対策もある。荷主~小売り~消費者~廃棄・リサイクルというライフサイクル全体の効率化により、一層のCO2排出量削減につなげることが求められよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
サービス業の生産性が向上しない要因を探る②
人口減少の中で求められる生産性向上 第6回
2015年10月29日
-
モーダルシフトがもたらす一石多鳥
2014年12月16日
-
家庭部門の低炭素化
電力使用量削減の新たなステージへ
2015年02月19日
-
モビリティ低炭素化の展開(前編)
人流の低炭素化がもたらす経済的効果と社会的効果
2015年01月15日
同じカテゴリの最新レポート
-
機械学習による有価証券報告書(2025年3月期)の人的資本開示の可視化
経営戦略と人事戦略の連動や、指標及び目標の設定に課題
2025年08月01日
-
サステナビリティWGの中間論点整理の公表
2027年3月期から順に有価証券報告書でのサステナビリティ開示拡充
2025年07月28日
-
カーボンクレジット市場の新たな規律と不確実性
VCMI登場後の市場と、企業に求められる戦略の頑健性
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日