2012年09月03日
サマリー
現在進行中の欧米における企業ガバナンス改革は、2007年の金融危機の反省が一つの契機となっている。経営者の報酬体系が、リスクテークを促す仕組みとして作用したことから、企業ガバナンスの見直しもこの点に重点が置かれた。企業の経営成果に強い利害関係を持つ株主を経営者報酬の決定プロセスに関与させることによって、経営者の行動を適正化することが目指された。米国・欧州で相次いで導入されている「SAY ON PA Y」は、その具体化である。
米国では、多くの企業ガバナンス改革が法定されているが、関連規則制定などその具体化作業には、大きな遅れがみられる。金融危機の混乱の中で十分に検討されないまま決定されたガバナンス改革の副作用を懸念する声は強い。
欧州では、取締役会の構成メンバーを多様化するなどの方法で、経営判断の適正を確保する方向が示されたが、ガバナンス改革の処方箋には、異論も多い。英国などでは、既に導入された「SAY ON PAY」の実効性に疑いも呈されている。
わが国では、経営者報酬の不適切さが問題視されることは少なかったが、欧米の動向から影響を受けることは避けようがない。報酬の適正化を求める投資家の声は日本企業にも及んでおり、報酬と業績の連動を確保することと、それを簡明に説明することが必要とされるようになりつつある。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
英国ガバナンス改革のグリーン・ペーパー
経営者報酬に対し労働者等が監視する仕組みの強化を目指す英国
2016年12月01日
-
迷走するメイ首相の企業ガバナンス改革
労働者代表を取締役会メンバーとするガバナンス改革案を撤回
2016年11月28日
-
英国新首相が企業ガバナンスに寄せる関心
英国企業の活力を増すためのコーポレートガバナンス強化策
2016年07月13日
-
企業と投資家の対話:何をどう話すか?
日本のフォローアップ会議の動向と米英における対話状況
2015年12月15日
-
スイス憲法改正と経営者報酬
2013年07月18日
-
機関投資家による株主総会議決権行使結果開示
2013年05月10日
同じカテゴリの最新レポート
-
東証が求めるIR体制の整備に必要な視点
財務情報とサステナビリティ情報を統合的に伝える体制の整備を
2025年04月28日
-
サステナビリティ課題への関心の低下で懸念されるシステムレベルリスク
サステナビリティ課題と金融、経済の相互関係
2025年04月21日
-
削減貢献量は低炭素ソリューションの優位性を訴求するための有用な指標となるか
注目されるWBCSDのガイダンスを踏まえて
2025年04月17日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日