サマリー
◆株式を保有している公的機関として、日本銀行、銀行等保有株式取得機構、預金保険機構の3つが挙げられる。3法人の保有総額は2015年3月末時点で6.7兆円である。
◆株式の保有は期限付きであり、3法人とも将来的には全て処分することになっている。現在は株式市場への影響等を考慮し、3法人とも市中(取引所市場)売却を凍結している。日本銀行は2016年3月末まで市中売却の凍結期間としており、このままいけば2016年4月以降、市中売却が開始されることになるが、金融政策との兼ね合いや内外金融資本市場の動向等を踏まえ、凍結期間を延長する可能性もある。
◆銀行等保有株式取得機構や預金保険機構は凍結期間の終了時期について特段公表していないが、3法人とも2008年10月に売却凍結を決定したことに鑑みれば、日本銀行が市中売却を開始した場合、他の2法人も売却開始という判断を下すことが予想される。
◆日本銀行が凍結期間を延長した場合、銀行等保有株式取得機構と預金保険機構もこれに追随する可能性が高いが、株式市場の需給面を考慮すれば、日本銀行以外の2法人が先に市中売却を開始することも選択肢として検討されるべきではないか。
◆市中売却の凍結期間中も、自社株買いに応じる場合など、例外的に保有株式を処分する方法はある。仮に3法人とも凍結期間を延長した場合、凍結期間中にできる限り保有残高を減らしておけば、将来市中売却を開始した際に株式市場へ与える影響を小さくできる。(3法人が保有する株式の)発行体においても、自社株買いの要請を検討することが望ましい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
公的機関の株式保有動向
着実に株式処分を進める日銀、取得機構は買取/存続期限を5年延長
2017年01月10日
-
公的機関の株式保有動向
2016年4月から日銀の市中売却が開始
2015年12月21日
-
公的機関の株式保有動向
日本銀行が売却開始を2年延長、見えなくなった出口戦略
2014年01月07日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
-
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
-
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日