ソチ・オリンピックに続き、ソチ・パラリンピックが3月7日に開幕し、日本人選手も多くのメダルを獲得している。パラリンピックの試合を見ると、障がい者というよりも常人を超えたパフォーマンスが展開され、選手の努力と人間の可能性に目を見張るばかりである。このような姿を見るとき、パラリンピックの種目の一部をオリンピック種目として健常者・障がい者の区別なく行えないかという考えが浮かぶ。
例えば、日本人が活躍しているチェアスキーは、「座る」という行為ができれば車椅子の利用者か否かに関係なく参加できるはずのスポーツである。スキー板1本というのは特殊な形態に見えるが、モノスキーという1本で滑るスキーもある(モノスキーは両足を固定するので、板の太さは通常の倍あるが)。もちろん、障がいの内容や程度によっては障がい者のみで競技するのが適切な種目も多いけれども、それらもオリンピックの各種目の中の一競技と位置付けることは十分可能である。それができれば、オリンピックとパラリンピックを同時ないし一体として開催することも考えられよう。
障がい者スポーツは障がい者のリハビリを出発点としているが、パラリンピックの歴史を紐解くと、それはリハビリの延長から競技性の高いスポーツへの発展過程に位置付けられる。それは競技者自身の希望でもあった。当初はオリンピックと関連付けながらもまったく独立して行われていた国際障がい者スポーツ大会は、ソウル大会で初めてパラリンピックの名でオリンピックの競技会場を使って連動して行われ、2000年のシドニー大会の後は、「オリンピック開催国は、オリンピック終了後、引き続いてパラリンピックを開催しなければならない」とされるに至っている(※1)。
オリンピックとパラリンピックの同時開催には、日程、競技施設、選手村の規模等の課題もあるが、現在のオリンピック憲章のオリンピックイズムの基本原則には、人間の尊厳、人権としてのスポーツ活動、あらゆる差別の否定が含まれている(※2)。スポーツ競技としてのパラリンピックの種目が健常者も行えるスポーツとして広がり、オリンピック種目として健常者も障がい者も参加できるようになれば、両者の理解が深まるだけでなく、「スポーツ」の観念も広がり、人間の可能性をより探求する機運が高まるのではないか。2020年の東京オリンピックでその一端でも実現すれば、東京大会は歴史に残る大会となろう。
(※1)日本障害者スポーツ協会「パラリンピックの歴史」
(※2)IOC, Fundamental Principles of Olympism
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
地域で影響を増す外国人の社会増減
コロナ禍後の地域の人口動態
2025年07月24日
-
生成AI利活用に関する技術・サービスの動向
基盤モデルなどの最新動向、および全体像・自社事例を解説
2024年07月01日
-
コロナ禍を踏まえた人口動向
出生動向と若年女性人口の移動から見た地方圏人口の今後
2024年03月28日
関連のサービス
最新のレポート・コラム
-
IOSCOの2026年作業プログラム
グローバル化とデジタル技術の進化がもたらす構造的リスクに対処
2026年03月13日
-
財政安定化の条件:ドーマー条件成立だけでなく、PB黒字化が重要
財政シリーズレポート4
2026年03月13日
-
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
-
大和のクリプトナビ No.8 東証が暗号資産トレジャリー企業への対応を検討か
トレジャリー企業を巡る直近の動向と海外制度の整理
2026年03月12日
-
続・アクティビスト投資家進化論
~今後アクティビスト投資家に求められる「価値創造力」~
2026年03月13日

