現在、新興国を中心に全世界的に都市化が進展しており、2020年には、新興国の都市人口と農村人口が逆転するといわれている。2050年には、全人口の約7割が都市に居住するようになるので、都市への人口集中を支えるための社会インフラの整備が急務となっている。
世界の社会インフラ開発においては、経済発展と環境保護の両立が必要で、都市建設とインフラの高度化が同時進行でなされなければならない。先進国では都市人口の高齢化や社会インフラの老朽化の問題がある。新興国においては、人口の都市集中と、受け皿としての大規模な都市建設が進められているが、先進国、新興国に共通して、環境保護が課題となっている。
そのような背景の下で、中国広東省の広州市では、「知恵のまち、学習のまち、革新のまち、未来のまち」という四つの機能を一体化させたスマートシティの建設が進められている。
「知恵のまち」とは、世界的先端技術や知恵をまちにもたらすこと、「学習のまち」とは、生涯学習のプラットホームをつくること、「革新のまち」とは、世界各国からハイレベルの人材を集め、様々なアイデアを集めること、「未来のまち」とは、世界のトレンドをリードし、持続可能な都市をつくるというコンセプトである。
スマートシティはサステナブルシティ、コンパクトシティ、エコシティなど様々な言葉で呼ばれる。広州の場合にはナレッジシティと称する。そこに住む住民の視点、開発者の視点、行政の視点で様々な呼び名があり、これらを総称してスマートシティと呼んでいる。
地球環境に配慮していても、安心・便利で豊かな都市生活においては、生活が豊かになると環境を破壊してしまう。次世代都市では、これらを調和させて、ちょうど良いバランスにすることが求められる。地球環境への配慮と、安心・便利で豊かな都市生活のバランスをうまくとることが必要である。
社会インフラには様々なパーツがある。太陽光・風力エネルギーといった再生可能エネルギー、アメリカから始まったスマートグリッドの構想、地域や家の中のエネルギーマネジメントなどのエネルギー分野がまず上げられる。また、スマートシティの中での生活に欠かせないのは交通である。広州市もかなり車が渋滞するので、渋滞解消のためにスマートモビリティーやスマートナビゲーションが必要になってくる。さらに、人間が生きるためには水が必要で、水を再生させながら効率的に使うというリサイクル、水インフラの分野もある。これらの社会インフラを生活につなげるために、ITの活用が非常に重要になってくる。
スマートシティがこれまでと違うところは、インフラのマネジメントである。これまでは、それぞれのサービス供給者がエネルギー、ビル、住宅、モビリティ、水環境などのインフラを整備するという、縦割りのマネジメントになっている。スマートシティはITの技術を統合するプラットホームで、従来の製品システムが持っている情報を使いつつ、高付加価値のユーザーサービスを提供する。大容量データベース、データセンターなどがスマートシティのサービスを担うという統合インフラが求められる。
従来、オフィスや個人、家庭の中で、より大容量に、より高速にと使ってきた情報系システムがある。社会インフラに目を向けると、工場などではより確実に安全、しかもリアルタイムにという制御のシステムがある。スマートシティを実現するためには、情報系のシステムと制御系のシステムを融合させることが非常に大事である。
広州ナレッジシティの開発期間は約20年で、完成時には54万人が居住する。計画面積は123km2で、広州市の中心部まで35km、空港まで25kmの位置にあり、車で2時間以内に香港・マカオなど珠江デルタ地域のほとんどの中心都市に行くことができる。既に周辺には高速道路網が整備され、2014年までに3本の地下鉄が開通する予定である。
広東省にはこれまで多くの日本企業が進出しており、経済・貿易面でのつながりは密接である。広州ナレッジシティについても日本は第3位の投資国になっており、2011年末時点で投資総額は15億ドル、投資プロジェクト数は137件に達している。
広州ナレッジシティでは情報技術産業、文化産業、教育産業、科学技術産業などに重点が置かれ、新エネルギー、省エネ、新素材、バイオ技術などの産業にも期待が持たれている。持続可能な都市づくりには世界各国の先進的な理念や技術が欠かせない。
特に、日本に対しては漫画やアニメをはじめとする文化産業への支援や、携帯電話によって映画館の情報を入手したり、電気代やガス代を支払ったりする無線技術による都市機能の向上が期待されている。世界一の技術力を持つ国として、広州ナレッジシティでは日本からのさらなる投資が期待されているのである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
地域で影響を増す外国人の社会増減
コロナ禍後の地域の人口動態
2025年07月24日
-
生成AI利活用に関する技術・サービスの動向
基盤モデルなどの最新動向、および全体像・自社事例を解説
2024年07月01日
-
コロナ禍を踏まえた人口動向
出生動向と若年女性人口の移動から見た地方圏人口の今後
2024年03月28日
関連のサービス
最新のレポート・コラム
-
IOSCOの2026年作業プログラム
グローバル化とデジタル技術の進化がもたらす構造的リスクに対処
2026年03月13日
-
財政安定化の条件:ドーマー条件成立だけでなく、PB黒字化が重要
財政シリーズレポート4
2026年03月13日
-
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
-
大和のクリプトナビ No.8 東証が暗号資産トレジャリー企業への対応を検討か
トレジャリー企業を巡る直近の動向と海外制度の整理
2026年03月12日
-
続・アクティビスト投資家進化論
~今後アクティビスト投資家に求められる「価値創造力」~
2026年03月13日

