近年、ネットショッピングの市場規模(※1)が拡大している。電子商店街、スーパーや百貨店の独自サイトに加えて、携帯電話に特化したショッピングサイトも登場している。
このようなネットショッピングでは、消費者の購買行動が実際の店舗とは異なる面があることが指摘されている。例えば、有名なモデルの一つに松竹梅モデルがある。これは、商品が三択である場合には、消費者は機能や金額の観点で中間となる「竹」を選択するという「極端の回避性」が働いたものである。しかし、ネットショッピングでは必ずしも「竹」ではなく、最も価格が安い「梅」を選択するそうである。
松竹梅モデルとは、「消費者は損失をそれと同じ規模の利得よりも重大に受けとめる」との行動パターンを整理したダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーにより提唱されたプロスペクト理論(1979年)(※2)における価値関数によって説明することができる。消費者が感じている商品の機能及び価格への価値基準(プロスペクト理論における価値関数では「参照点」という)に対して、高機能高価格の商品を選択すると、高機能を得た相対的満足感(B)より、高い対価を支払った価値の損失感(A)の方が2倍から2.5倍大きくなる。同様に、低機能低価格の商品を選択すると、当初想定した価格より安いというお徳感(B)よりも、機能を省くことによる損失感(A)の方が大きくなる。したがって、消費者は高価格も低機能も選択することができず、極端な損失を回避する行動をとるために、中間の「竹」を選択することになる。
一方、ネットショッピングでは、消費者は予めインターネット上において、価格比較サイト等を通して、多数の売り手が示す価格を瞬時に比較することができるため、価格の参照点が最低水準に設定される傾向にある。また、ネットショッピングにおける消費者は価格に対する感応度が強いといわれている。そのために、消費者が高価格商品を選択することは回避され、「梅」を選択することになる。加えて、ネットショッピングでは、他人の眼を気にすることなく購入できることも起因していると考えられる。

このように、実際の店舗とネットショッピングにおける消費者の購買行動には、予め消費者に無為意識にすり込まれた相対的な価値基準によって違いが現れる。ネットショッピングの売り手は、このような消費者の行動パターンを踏まえたデザインが必要であろう。
(※1)「平成19年度我が国のIT利活用に関する調査研究(電子商取引に関する市場調査)」(経済産業省)によると、日本における消費者向け電子商取引の2007年の市場規模は、5兆3,440億円(前年比21.7%増)である。
(※2)ダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)は、不確実性の下での人間の判断など心理学的研究を経済学に導入するなど、行動経済学と実験経済学という新研究分野を開拓した功績が認められ、2002年にノーベル経済学賞を受賞した。
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