2021年09月22日
サマリー
◆政府は、専業主婦世帯を前提とした、現役男性の平均手取り収入に対する年金受給額の割合を「モデル年金の所得代替率」として、その将来見通しとともに公表している。
◆本レポートでは、(専業主婦世帯に限らない)社会全体でみた「公的年金が現役世代の所得をカバーする割合」を求めるため「新モデル年金の所得代替率」を試算した。具体的には、分母の平均手取り収入および分子の年金額につき、就業の有無や形態を特に設定しない、より汎用的な「その世代における夫婦世帯の平均像」を想定し、各世代・各時点の男女それぞれの平均的な収入、就業率、厚生年金加入率を用いて試算した。
◆試算の結果、足元の新規年金受給者の「年金額」はモデル年金と新モデル年金でほぼ変わらないが、「所得代替率」はモデル年金が61.7%であるのに対し新モデル年金では44.0%に留まることが分かった。夫婦世帯において実際の収入は厚生年金制度の対象となっている収入より約3割多く、この差分が新モデル年金の分母の収入に含まれる一方で、分子の年金額には反映されないため所得代替率の差が生じている。
◆新モデル年金の所得代替率は、標準ケースで2019年から2065年にかけて5.7%pt低下する見通しだが、そのうち約4割の2.2%ptを短時間労働者への厚生年金の適用拡大によって補える。新モデル年金の所得代替率を引き上げるカギは、就労による収入のうち多くを厚生年金制度に取り込むことであり、適用拡大はその有効な手段である。
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