女性の就労実績を加味した「新モデル年金」の提唱と試算

ゼロ成長を前提としても夫婦世帯の平均年金額は増加する試算結果に

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サマリー

◆政府は、年金受給額の目安として、夫が40年間厚生年金に加入し、妻は40年間専業主婦である世帯を前提とした「モデル年金」を算出し、その将来見通しとともに公表している。しかし、若い世代ほど夫婦の働き方は多様化しており、「モデル年金」が自らの世代が受給する年金額の平均像と乖離することが考えられる。

◆本レポートでは、「新モデル年金」として、就業の有無や形態を特に設定しない、より汎用的な「その世代における夫婦世帯の平均像」を想定し、各世代の男女それぞれの平均的な厚生年金加入実績を持つ夫婦世帯における年金額を試算した。

◆試算の結果、足元の新規年金受給者においては「モデル年金」と「新モデル年金」はほぼ同額であり、「モデル年金」は平均的な年金額の目安としてなお有用なものであることが分かった。しかし、後に生まれた世代ほど女性がより高い賃金水準でより長く働くことが想定されるため「新モデル年金」は「モデル年金」より高額になっていき、その差も開いていく。「モデル年金」は1980年以後生まれの世代が将来受け取る年金受給額の目安としては、あまり有用なものとなっていないものと考えられる。

◆「新モデル年金」では厚生年金の適用拡大による公的年金の充実を端的に示すことができ、長期の実質GDP成長率につき0%を見込む保守的な経済前提においても僅かながら年金額が増加していく見通しを示すことができる。政府には、「新モデル年金」を参考に、働き方の変化を踏まえた新たな年金受給額の目安の算出と公表を検討していただきたい。

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