サマリー
◆消費税増収分の使途変更等により、幼児・高等教育の無償化など2兆円規模の政策パッケージが実施される。現在の社会保障は高齢者に偏っており、若者や現役世代への給付が十分でないため、全世代型の社会保障制度を実現しようとする政策の意義は大きい。ただ、消費税増収分を充てるといっても、結局のところ赤字国債を財源にすることと同じである。新たな政府支出を増やす以上は、新たな財源を確保しなければ社会保障と財政を両立させることはできない。
◆新しい経済政策パッケージには、2018年夏に向けて「オーストラリアのHECS等諸外国の事例も参考としつつ、中間所得層におけるアクセスの機会均等について検討を継続する」ことが盛り込まれた。これは高等教育費の「出世払い方式」が想定されているとみられるが、実施には兆円単位の財源が必要であり、財政健全化目標が先送りされた中でどこまで財政再建と両立できるか不透明である。就業意欲を低下させる可能性があり、働き方の男女差が大きい現状では、女性の就業選択を歪めかねない。
◆まずは消費税率を予定通り10%へ引き上げる必要があるが、再び延期されて給付の充実だけが先行する可能性はゼロではない。そのため、例えば、消費税増税を予定通り実施することを大前提とし、仮に増税時に景気が悪ければ経済対策で対処するなど、景気に配慮しつつ必要な増税を確実に行うための政策的枠組みを検討すべきである。
◆2020年度の財政健全化目標は先送りされることになったが、これを契機に安倍内閣が推進する経済・財政一体改革が停滞することは避けなければならない。基礎的財政収支の改善ペースを見れば、人づくり革命関連の新たな政策がなかったとしても、改革モメンタムを加速させる必要性が大きいことは明らかである。真の全世代型社会保障を実現するためにも、特に医療・介護給付の効率化や重点化、年齢でなく負担能力に応じた負担の徹底などについて、検討を大胆に進めるべきである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
医療等情報の一次利用を広げるには
広範な閲覧・迅速な共有・義務化へ移行で拡大する豪州の一次利用
2026年03月12日
-
中小企業の従業員に資産形成機会の充実を
勤労者への資産形成機会の拡大、金融所得格差の是正に向けて
2025年12月29日
-
介護情報基盤の構築に向けた現状と課題
全国実施の遅れは地域包括ケアシステムの推進にもマイナスの影響
2025年07月10日
最新のレポート・コラム
-
大和のセキュリティトークンナビ 第4回 社債セキュリティトークンとは?(前半)
社債投資の仕組み、社債セキュリティトークンの特性
2026年03月25日
-
コングロマリット・ディスカウントの再考察
~日本企業の定量分析から読み解く、人的資本経営と企業価値の新関係~
2026年03月25日
-
転換点を迎えるサステナビリティ開示
統合報告書の進化とSSBJ開示導入に向けた対応のポイント
2026年03月25日
-
日本経済見通し:2026年3月
春闘賃上げ率5%台維持も、中東情勢悪化が新たな景気下押し要因に
2026年03月24日
-
米国:原油高でも「Drill, Baby, Drill」ではなく「Drill, Maybe, Drill」?
2026年03月25日
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
理系進路選択に対する男女差の要因分析
女性の理系人材を増やすには、より早期段階での介入や対応が必要
2026年02月06日
-
2026年の東証改革の方針
上場会社の質の向上と新陳代謝を促進する市場機能の強化
2026年02月02日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
-
第228回日本経済予測
第2次高市政権の重点政策、どう進めるか①外国人労働者受け入れ、②消費減税/成長・危機管理投資、を検証
2026年02月20日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
理系進路選択に対する男女差の要因分析
女性の理系人材を増やすには、より早期段階での介入や対応が必要
2026年02月06日
2026年の東証改革の方針
上場会社の質の向上と新陳代謝を促進する市場機能の強化
2026年02月02日
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
第228回日本経済予測
第2次高市政権の重点政策、どう進めるか①外国人労働者受け入れ、②消費減税/成長・危機管理投資、を検証
2026年02月20日

