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新しい経済政策パッケージと全世代型社会保障実現への課題

高等教育費の「出世払い方式」導入には課題が多い

2017年12月12日

経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司

金融調査部 研究員 中村 文香

サマリー

◆消費税増収分の使途変更等により、幼児・高等教育の無償化など2兆円規模の政策パッケージが実施される。現在の社会保障は高齢者に偏っており、若者や現役世代への給付が十分でないため、全世代型の社会保障制度を実現しようとする政策の意義は大きい。ただ、消費税増収分を充てるといっても、結局のところ赤字国債を財源にすることと同じである。新たな政府支出を増やす以上は、新たな財源を確保しなければ社会保障と財政を両立させることはできない。


◆新しい経済政策パッケージには、2018年夏に向けて「オーストラリアのHECS等諸外国の事例も参考としつつ、中間所得層におけるアクセスの機会均等について検討を継続する」ことが盛り込まれた。これは高等教育費の「出世払い方式」が想定されているとみられるが、実施には兆円単位の財源が必要であり、財政健全化目標が先送りされた中でどこまで財政再建と両立できるか不透明である。就業意欲を低下させる可能性があり、働き方の男女差が大きい現状では、女性の就業選択を歪めかねない。


◆まずは消費税率を予定通り10%へ引き上げる必要があるが、再び延期されて給付の充実だけが先行する可能性はゼロではない。そのため、例えば、消費税増税を予定通り実施することを大前提とし、仮に増税時に景気が悪ければ経済対策で対処するなど、景気に配慮しつつ必要な増税を確実に行うための政策的枠組みを検討すべきである。


◆2020年度の財政健全化目標は先送りされることになったが、これを契機に安倍内閣が推進する経済・財政一体改革が停滞することは避けなければならない。基礎的財政収支の改善ペースを見れば、人づくり革命関連の新たな政策がなかったとしても、改革モメンタムを加速させる必要性が大きいことは明らかである。真の全世代型社会保障を実現するためにも、特に医療・介護給付の効率化や重点化、年齢でなく負担能力に応じた負担の徹底などについて、検討を大胆に進めるべきである。

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