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医療保険制度の持続可能性を高めるために

コスト意識の共有を進めながら、国民の健康を増進させよう

2012年04月13日

政策調査部 政策調査部長 鈴木 準

サマリー

◆医療保険制度は、人口高齢化によって特に財政面から構造的な問題を抱えている。日本の医療が長寿化を実現していることを私たちは誇ってよいが、だからこそ長寿化は医療費というある種のコストをかけて実現していることを改めて踏まえたい。ヘルスケアは産業だが、医療サービスや薬品の需要・供給が拡大することと、それを需要者が購入するコストをどう賄うかは、別の問題である。医療保険財政の維持可能性を回復させるには、何らかの負担増、給付の抑制、国民の健康増進が必要である。

◆近年の国民医療費の伸びの大部分は、高齢者医療費で説明できる。高齢者医療費は高齢患者1人当たりの医療費増加と高齢者数の増加で増えている。制度上、高齢者医療費が増加すれば、現役層と企業の負担が増加する。現在、現役層の保険料からの後期高齢者支援金は5.3兆円に達している。公費負担(税からの移転)の5.8兆円の多くの部分も現役層(と将来世代)が負担しているものと捉えられる。高齢者医療費をどうコントロールするかが課題解決のカギだが、本稿執筆時点で後期高齢者医療制度廃止後の姿は十分に見通せない。

◆各種の医療保険者の中で、従来は財政状況が比較的良好と考えられてきた健康保険組合も、深刻な財政問題を抱えるに至っている。健保組合における財政悪化の原因も高齢者医療への拠出拡大である。健保組合の場合はそれだけにとどまらず、国庫や他の保険者の負担の実質的な肩代わりを、いわば便宜主義的に求められる傾向が強まっているようにみえる。負担能力の観点からの公平性について一定の理解をすべきとはいえ、大企業における労働コストの急激な上昇が生産活動や日本経済に与える影響という視点からも議論が必要だろう。

◆高齢者医療費については、患者自己負担や保険料負担等についてまずは本則通りとし、また、自己負担の引上げや受診時定額負担の導入などによってコスト意識を国民全体で共有することが求められる。また、健保組合など保険者の機能と役割を、被保険者(加入者)との連携という観点から強化し、国民医療費の増加を長期的に抑制するような健康増進政策の推進が望まれる。生活習慣病対策が国民的課題となっている中、将来の高齢者である現在の若・壮年層の健康を維持し、国民一人ひとりの意識改革を促す上で、保険者に期待される役割は大きい。

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