東海、九州など多くの地域で改善~物価高を吸収できる賃上げの持続性がカギ

2023年1月 大和地域AI(地域愛)インデックス

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  • 経済調査部 主任研究員 溝端 幹雄
  • 経済調査部 研究員 中田 理惠

サマリー

◆2023年1月の大和地域AI(地域愛)インデックスは、「東北」を除く全地域で改善した。

◆分野別に見ると、家計関連のインデックスは、今冬は感染抑制・経済活動の両立で行動制限がなく、全国的な旅行支援やインバウンド再開もあって、多くの観光地がある「近畿」「北陸」「北海道」「九州・沖縄」などを中心に消費が改善した。宿泊料金の引き上げ等の物価高も吸収できているようだ。また、乗用車販売も供給制約の影響が一層弱まって持ち直しつつある。一方、資材価格の上昇などで住宅価格が上昇しており、貸家で利回りが低下していることなどから、住宅投資は「九州・沖縄」などで悪化している。そうした中、雇用・所得環境は「中国」「九州・沖縄」など多くの地域で引き続き改善した。先行きの需要回復への期待や人手不足・物価高に対応した賞与引き上げやベア実施等によって、賃上げと消費の好循環が動き始めているようだ。企業関連では、設備投資の動向にはあまり変化はなかったが、「東海」で乗用車の電動化・自動化対応等で研究開発投資や能力増強投資が増えている。輸出は「九州・沖縄」「東海」などで輸送用機械を中心に改善傾向だ。生産も「四国」で汎用・生産用機械、「九州・沖縄」で自動車、生産用・業務用機械などが改善しているが、「東北」「中国」では電子部品・デバイスの在庫調整などによりやや悪化した。企業マインドはおおむね改善している。なお、公共投資の動向には特に変化はなかった。

◆国内外では長引く物価高の影響で金融環境は引き締め傾向にあるが、国内では感染抑制と経済活動の両立が進んで全国で旅行支援やインバウンド再開による好影響が出ており、さらに賃上げの効果もあって、総じて景気は改善しつつある。一方、海外景気の後退懸念は引き続き高いことから、経済環境の不確実性には注意が必要だ。今後は、所得・雇用の改善と供給制約の緩和で内需回復が継続することで物価高のマイナスの影響が緩和され、家計関連は宿泊・外食などのサービスや自動車販売などで消費は改善するだろう。企業関連では海外景気の後退による生産・輸出の下振れリスクがあるものの、中長期的には環境対応等で設備投資の改善が期待できる。地域経済は緩やかな回復基調が続くが、物価高を吸収できる賃上げ環境の持続性を注視していく必要があるだろう。

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