2016年01月19日
サマリー
◆様々な指標から水道インフラの老朽化が進んでいるのは間違いない。ただ、それでも人口1人当たりの正味財産は実は減っていない。普及率は既に天井だが、末端の配水支管の新規布設が毎年あり管路の総延長は増え続けてきた。その結果、管網当たりの人口密度が低下。これも老朽化指標の悪化の原因だ。今あるものをやみくもに更新するのではなく、管路総延長のダウンサイジングを図りつつ、優先順位をもって更新対象を絞り込むことが、人口減少に伴い予算制約が厳しくなる中で重要だ。
◆具体的には、工事量を2009年度水準に戻し、新規布設をやめて布設替に回す。1998年度の水準を目安に管網当たり人口密度が向上するようダウンサイジングを図る。この前提で、年間工事量を将来にわたって一定に保つことができれば2045年度には更新周期が50年まで縮まる。管路の耐用年数に照らして妥当な数字だ。なお、人口減少に合わせて更新財源も減少するので、国民負担を増やさないようにするには今後45年で7割水準となるまでコスト削減が必要。
◆ダウンサイジングを推進するには、施設整備計画はじめ計画の立て方も経営戦略的でなければならない。集中整備する箇所とあえて更新しない箇所を選択する優先順位の考え方を本質とするからだ。技術継承を確実にする体系的な人材育成の仕組みも必要。もっとも職員の高齢化が極端に進んだ事業体は大手インフラ企業に経営を委ねるのも一考だ。水道料金は、携帯電話と同じくほとんど固定費が占めるコスト構造を反映した定額制(使い放題)を導入し、1人当たり水使用量が減っても収入は減らないようにする。集住を促すコンパクトシティ区域の料金を安く、更新コストが高いところ、管網密度が低いところは高くする地域別料金も検討に値する。
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