地域通貨は地域金融システムに何をもたらすか
『大和総研調査季報』 2018年春季号(Vol.30)掲載
2018年04月23日
サマリー
近年、地域・文化圏といったコミュニティの中で流通する地域通貨への注目度が高まっている。地域通貨はこれまでにも世界各国で発行されてきた。日本においても、1990 年代以降、地域通貨が発行されてきたが、管理コストの負担や利用拡大が進まないといった課題から、発行停止となった事例が多い。
日本で近年発行された地域通貨の一部は、(1)地域金融機関が発行主体となっており、決済サービスに貸付なども加えた総合的な金融サービスを提供し得ること、(2)デジタル技術の活用が進んでおり、決済手段としての利便性を高めつつ管理コストを抑制し得ること、という2点において、過去の事例よりもサステナブルな仕組みになる可能性がある。
今後は、地域通貨のさらなるコスト抑制の方策としてブロックチェーン技術の活用や、ICO等の新たな地域通貨の発行方式の適切な運用が注目点である。こうした新たに登場した技術・仕組みを取り入れながら、地域通貨には、地域内の消費喚起や、地域内での資金の円滑な循環を実現し、地域経済・コミュニティの活性化を推し進める役割が期待されよう。
大和総研 調査本部が、その長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、経済、金融資本市場及びそれらを取り巻く制度を含め、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2021年01月26日
銀行等の業務範囲・5%ルールなどの見直し
銀行制度等WG報告
-
2021年01月25日
2021年のASEAN5経済見通し
景気回復は年後半に加速。懸念が多いタイとフィリピン。
-
2021年01月25日
税金読本(16-2)税務署への財産債務の申告と国外転出時みなし譲渡益課税
-
2021年01月22日
金融商品の評価
金融商品の価値はどのように算定するのか?
-
2021年01月26日
コロナ禍における地球環境問題
~ CO₂削減に向けたムーブメント ~
よく読まれているリサーチレポート
-
2020年12月17日
2021年の日本経済見通し
+2%超の成長を見込むも感染状況次第で上下に大きく振れる可能性
-
2020年12月01日
2020年10月雇用統計
有効求人倍率が1年半ぶりに上昇
-
2020年11月20日
日本経済見通し:2020年11月
経済見通しを改訂/景気回復が続くも、感染爆発懸念は強まる
-
2020年08月14日
来春に改訂されるCGコードの論点
東証再編時における市場選択の観点からも要注目
-
2020年10月15日
緊急事態宣言解除後の地域別観光動向/Go To トラベルキャンペーンのインパクト試算
ローカルツーリズムが回復に寄与するも、依然厳しい状況が続く