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地方の所得格差と分配問題を考える

地域間格差縮小の主役は企業、家計への波及は道半ば

2016年08月05日

経済調査部 主任研究員 溝端 幹雄

サマリー

◆本稿では、地域間の所得格差の実態について、民間・政府部門の分配の視点から論じる。全体的には地域間所得格差は縮小しているものの、地域によってばらつきがある。東京との所得格差が縮小している大きな要因は企業所得の改善にあり、家計所得の改善は進んでいない。


◆人的資本は全国的に高度化しているものの、都市と地方で格差が大きくなっている。技術が急速に高度化し、グローバル化も進む中で、地方では賃金交渉力の弱い未熟練労働者が相対的に多くなっている。一方で、都市では主に大企業に残る日本型雇用制度のために雇用の流動化が進まず、転職による賃金プレミアムの喪失懸念があるので流動化が進まない。これら労働者の賃金交渉力を弱める要因が、家計所得への分配がなかなか増えない原因ではないか。


◆一方、政府部門を通じた分配に関しては、関東や中部・北陸、近畿の一部の家計の負担によって、西日本の家計に所得が再分配されている。この背景には西日本における高齢化要因によって賦課方式で運営される年金の影響が強く出ているものと考えられるが、地域固有の要因も働いており、地域的に偏った所得再分配の歪みが指摘できる。


◆適切な所得再分配を実現するには、できるだけ所得水準に応じた再分配を強化していく必要がある。但しその際には、現役世代の人的資本を高めていくような所得再分配のあり方を真剣に考えるべきだ。例えば、就学時(初等教育から高等教育まで)の教育だけでなく、幼稚園や保育所での就学前教育、そして経済環境の変化に応じて必要なスキルを身に付けられるように、再就職等が容易となるような社会人向けの所得再分配が考えられる。


◆今後、地方における家計の所得分配を増やしていくには、資本と人材の高度化が重要であると考える。グローバル化と技術の高度化が同時進行する中で、地域産業の資本労働比率を高めるなどしながら、労働者は求められるスキルを自分で身に付けていき、賃金交渉力を高めていくことが重要であろう。それらをサポートする体制の充実が、結局のところ、地方経済の立て直しのための本質的な方向性ではないかと考える。

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