サマリー
本稿では「働き方・休み方改革」によるわれわれの生活時間の変化を考察する。労働時間が削減されると大半の余暇時間は増加するが、仕事関係の「交際・付き合い」「食事」等の時間は減少する。また、労働時間の削減がマクロの消費全体に与える影響を分析したが、統計的に有意な関係は確認できなかった。ただし個別には、食料、衣料、交際費はマイナス、光熱、教養娯楽、理美容、身の回り用品ではプラスの影響があった。つまり、労働時間の削減は余暇時間の変化を通じて、消費項目の配分を変化させる可能性が高い。
都市圏に比べて地方圏の就業女性の方が余暇時間は短い。背景には地方圏の就業女性では家事・育児等に費やす時間が長く、低賃金でも所得を確保するために労働時間が長くなることがあると考えられる。ただし、地方圏では男女間の労働時間の差が小さく、地方圏の女性は子育ての負担感が小さい。
家計生産時間や市場労働時間が軽減され、さらに地域や男女間でそれらの時間の差が縮小すれば、余暇時間の拡大により心身機能の回復を図り、子育て負担軽減や能力開発の時間が確保できる。今後の経済成長の源泉はイノベーションを生む人的資本であり、われわれの生活時間をその強化に使えば、日本の成長力向上に貢献するだろう。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
大介護時代における企業の両立支援
〜人的資本のテーマは「介護」にシフト〜『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
-
2025年度の健康経営の注目点
ISO 25554の発行を受け、PDCAの実施が一段と重視される
2024年12月24日
-
健康経営で高評価を得るポイント
政策の方向性を踏まえた対応と、データ活用による効果検証が必要
2024年09月20日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日