サマリー
◆2017年7月18日に内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(中長期試算)が改定された。2020年度の基礎的財政収支は経済再生ケースでGDP比▲1.3%と見込まれる。金額では▲8.2兆円であり、前回公表時からの改定幅はわずかである。
◆2020年度にPBを黒字化させるためにどの程度の歳出抑制が必要なのかをベースラインケースをもとに試算すると、国の一般歳出を2019~20年度の2年間で3兆円削減することが「目安」となる。内訳は社会保障関係費が▲0.5兆円、社会保障以外の一般歳出が▲2.5兆円であり、地方の歳出も大幅な見直しが求められる。
◆経済再生ケースではPBが赤字のまま公債等残高GDP比が低下する見通しだが、それが実現するかどうかは金利と経済成長率の関係次第である。デフレから脱却すれば、金融緩和策はいずれ出口に向かう。インフレ期待の正常化で金利が上昇するとき、財政再建の遅れなどで国債に対する信用が低下すれば、負債利子率が経済成長率を大幅に上回る恐れがある。
◆いっそうの歳出抑制が求められる中、少なくとも現在の金融緩和が抱える副作用の蓄積を無視したり、景気への配慮から超低金利を利用して財政支出を拡大させたりすることは避けるべきだ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
ソフトウェア投資の拡大は今後も続くのか
求められるIT人材の育成、中小企業への支援、行政のデジタル化
2024年04月25日
-
中国経済見通し:名目<実質、実感なき景気堅調
不動産不況に一段の長期化の懸念
2024年04月25日
-
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
大手生保は中長期の事業環境の変化に対応できるか
~本格化するビジネスモデル変革~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
複眼的思考へのヒント
2024年04月24日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日