消費税の軽減税率導入が中小企業に及ぼすリスク
『大和総研調査季報』 2019 年新春号(Vol.33)掲載
2019年01月09日
サマリー
2019 年10 月に、消費税率が10%に引き上げられ、軽減税率が導入される予定である。消費税率引き上げ・軽減税率導入に関しては、主に、税率引き上げによる消費の反動減の影響が注目されており、それを回避するための様々な施策などが講じられる予定である。これらを考慮すると、消費税率引き上げ・軽減税率導入は家計には大きな影響を及ぼさないと考えられる。
一方、事業者については、将来的に特に中小事業者に対して影響が及ぶ可能性がある。税率引き上げの4年後の2023 年10 月に導入される「インボイス制度」により、消費税が免税されている事業者(売上高1,000 万円以下)からの仕入が不利に扱われ、企業間取引から排除される恐れがあるためである。影響を受ける中小事業者は513 万者に上ると推計されており、特に零細企業の多い地方経済に与える影響は小さくないと予想される。
このような問題を踏まえ、インボイス制度の導入に対する事業者の準備状況や事業者取引への影響の可能性を検証し、必要な場合は一定の措置を講ずる余地が制度上設けられており、今後の議論に注目する必要がある。
大和総研 リサーチ本部が、その長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、経済、金融資本市場及びそれらを取り巻く制度を含め、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
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