米国税制改革法の概要と経済効果

約30年ぶりの抜本改革。減税によるGDP成長率押し上げ効果は限定的

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2017年12月26日

  • 金融調査部 主任研究員 鳥毛 拓馬
  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆2017年12月22日(米国時間)、既に議会を通過していた税制改革法案(Tax Cuts and Jobs Act)にトランプ大統領が署名したことにより、約30年ぶりの税制抜本改革が実現することになった。2018年より個人の連邦所得税の最高税率が現行の39.6%から37%に引き下げられるほか、現行35%の連邦法人税率が21%に引き下げられる。


◆議会両院税制合同委員会(Joint Committee on Taxation)が示した試算によれば、税制改革により、2018年度から2027年度の連邦財政収支は累積で1兆4,560億ドル悪化することが見込まれている。内訳では、個人税制の変更により1兆1,266億ドル、法人税制の変更により6,538億ドルそれぞれ財政収支が悪化することが見込まれている。


◆米国シンクタンクなどが試算する税制改革の効果を見ると、実質GDP成長率の押し上げは、今後10年間の平均で0.0~+0.3%pt程度とされており、減税規模に対してその経済効果は小さい。


◆減税規模が大きい個人税制では、特に富裕層への恩恵が大きいことが、経済効果を限定させる要因になると見込まれる。法人税制に関しては、現状、米国企業は総じてキャッシュフローに余裕があるため、法人税率の引き下げ、即時償却によって資本コストが低下したとしても設備投資を喚起する効果は限定的に留まると考えられる。

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