有価証券報告書の総会前提出の現状と課題

様々な取組みが行われるも、なお実施は限定的

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サマリー

◆2024年4月3日、岸田首相は、より多くの企業において有価証券報告書の開示が株主総会前のタイミング(総会前提出)となるよう、金融庁を中心に関係省庁と連携して検討を進める方針を明らかにした。

◆有価証券報告書の総会前提出をめぐっては様々な取組みが行われてきた。しかし、12月決算の東証上場会社の2023年事業年度の定時株主総会を調べると、530社のうち実施しているのは8社にとどまるなど、成果が上がっているとは言い難い。

◆有価証券報告書の総会前提出を実施するための対応としては、会社法の特例を活用して、有価証券報告書で(会社法上の)株主総会資料を代用した上で、提出を前倒しする対応、有価証券報告書の提出時期はそのままに、定時株主総会の開催を後ろ倒しする対応などが考えられるが、いずれも一長一短ある。加えて、サステナビリティ開示や英文開示への対応も考慮する必要がある。

◆今後、総会前提出の実現を速やかに目指すことが期待されるが、その具体的な対応については、特定の対応策を画一的に当てはめるよりも、複数の対応策から事情に応じて選択可能として、定時株主総会の日程も4~8月に幅広く分散した方が、本来の目的である機関投資家と上場会社の建設的な対話の深化にもつながるのではないかと思われる。

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