2021年09月28日
サマリー
◆2021年6月、東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」が改訂され、スキル・マトリックスなどの形で取締役の有するスキル等の組み合わせの開示が求められる。本稿ではTOPIX500採用会社のうち、2020年版の統合報告書、アニュアルレポート、サステナビリティ報告書、CSRレポートを発行している474社を対象に、スキル・マトリックスの開示状況を分析し、取締役等に必要と考えられるスキルを特定する上での示唆を得る。
◆取締役に必要なスキルとして「企業経営」や「法務・コンプライアンス、財務・会計・税務」、「リスク管理」など、企業の経営やガバナンスに重要なスキルが挙げられている場合が多く見受けられた。また、昨今の多様性、デジタルトランスフォーメーション、サステナビリティの重要性も踏まえ、「海外経験」、「技術」、「ESG・サステナビリティ」といったスキルも重視される傾向にあると考えられる。どのようなスキルが必要かについては、各企業の経営戦略や外部環境を考慮して特定をすることが望ましいだろう。
◆「社内」取締役と「社外」取締役ごとにどのスキルを多く保有している傾向にあるのかを見てみると、社内取締役は「営業・マーケティング・企画開発など」、「研究開発など」といったスキルを保有していた。一方、社外取締役は「ESG・サステナビリティ」など、社内だけではカバーしきれない分野に関するスキルを有する者が多い傾向にあった。
◆また、社内「取締役」と社内「監査役」ごとにスキルの保有傾向を見てみると、社内取締役は企業の経営や各事業に直接関わりのあるスキルの保有率が高くなっている一方で、社内監査役は業務監査・会計監査をはじめとするいわば「守りの機能」を果たすためのスキルの保有率が高かった。
◆このような役割の違いも意識した上で、企業全体としてどのようなスキルを備える必要があるのかを考えることが望ましいだろう。
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