2014年04月01日
サマリー
◆2014年2月に開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議の声明において、2013年9月のサンクトペテルブルク・サミットから引き続き、金融危機の再発防止が挙げられ、シャドーバンキングへの対処など危機防止策を今秋の首脳会談までに完了する目標が掲げられた。
◆サンクトペテルブルク・サミットでは、リーマン・ショック後の2008年11月のG20サミット以来5年間、国際金融規制の改革が実施され、一定の成果があがっていると宣言された。同宣言では、国際金融規制改革の最大のポイントは、金融危機の主因である“断層(Fault lines)”をなくすためのこれまでにない“国際協調”であるとしている。
◆この5年間、特に危機の発生源である米国、多大な影響を受けたユーロ圏、英国では金融規制の構造的な問題について、政府と規制機関が一体となって調査・分析しながら、金融、特に銀行の規制改革に取り組んできた。この結果、2013年12月に米国ではボルカー・ルールの細則が確定し、英国では銀行規制法が成立した。
◆ユーロ圏では、2014年1月末に、リーカネン委員会報告書をもとにしたバーニー委員の提案が欧州委員会で受理された。しかし、今後のユーロ圏の銀行規制改革の方向性を見通すと加盟国は一枚岩ではない可能性もあると考えられる。
◆一方、銀行規制改革の主な内容は、通常の預金取扱機関の業務をリスクの高い証券業務から強制的に分離することであるが、同時に、金融仲介機関としての預金取扱機関の原点に立ち戻り、本来“あるべき役割”を踏まえた上で、事業範囲あるいは事業モデルを再定義しようとするものであるとも考えられる。
◆ただし、預金取扱機関に健全性と持続可能な収益性を維持するために、金融仲介機関としてどの事業範囲まで認めるのかは、大きな課題として残ると考えられる。
◆本稿では以上を踏まえた上で、今後の国際金融規制改革の行方について考察を行う。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
Brexitによる国際金融規制の協調の綻びの懸念
気候関連財務リスク等新リスクに取組む中でのFault Linesの懸念
2016年07月07日
-
FinTech は金融業の成長の起爆剤となるか
金融業界の規制改革と成長を両立させるために必要なFinTech
2016年03月25日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
学生の「103万円の壁」撤廃による就業調整解消は実現可能で経済効果も大きい
学生61万人の就業調整解消で個人消費は最大0.3兆円増の可能性
2024年11月11日
-
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算
基礎控除を75万円引上げると約7.3兆円の減税
2024年11月05日
-
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第2版)
「基礎控除引上げ+給与所得控除上限引下げ案」を検証
2024年11月08日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
-
トランプ2.0で激変する米国ESG投資政策
年金制度におけるESG投資の禁止、ESG関連開示制度の撤廃など
2024年11月07日
学生の「103万円の壁」撤廃による就業調整解消は実現可能で経済効果も大きい
学生61万人の就業調整解消で個人消費は最大0.3兆円増の可能性
2024年11月11日
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算
基礎控除を75万円引上げると約7.3兆円の減税
2024年11月05日
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第2版)
「基礎控除引上げ+給与所得控除上限引下げ案」を検証
2024年11月08日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
トランプ2.0で激変する米国ESG投資政策
年金制度におけるESG投資の禁止、ESG関連開示制度の撤廃など
2024年11月07日