2013年05月20日
サマリー
◆2013年4月16日、金融庁は、「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」(金商法等改正法案)を国会に提出している。金商法等改正法案には、金融機関の秩序ある処理(“resolution”)の枠組みの整備を目的とした、預金保険法の一部を改正する法案(預保法改正法案)が含まれている。
◆預保法改正法案は、既存の金融危機対応措置である預金保険法102条を残しつつ、対象を金融業全体(預金取扱金融機関、保険会社、金融商品取引業者、金融持株会社等)に拡大した“resolution”の新設を提案するものである。
◆“resolution”は、市場の著しい混乱の回避のために必要と認められる場合、金融危機対応会議の議を経て内閣総理大臣が、金融機関の秩序ある処理の必要性を認定することにより実施される。措置内容は、預金保険機構による監視、流動性供給・資金援助等である(債務超過でない場合、必要に応じて資本増強も可能)。そして、“resolution”を実施する場合には、契約上のベイルイン(無担保債権のヘアカット又は普通株式への転換)が発動される。
◆既存の預金保険法102条と新設の“resolution”は、その発動の認定(金融危機対応会議による認定)、債務超過をしていない場合の資本増強、そして費用負担(負債額をベースとした業界の事後負担を原則)について、重複するアプローチを採っている。そのため、預保法改正法案の提案は、預金取扱金融機関にとっては大きな意味を持たない可能性がある(もっとも、これまでとは異なり、預金取扱銀行以外のノンバンク(証券会社・保険会社等)の破綻に際しても費用負担を求められ得ることにはなる)。
◆これに対して、預金取扱金融機関以外のノンバンク(証券会社・保険会社等)にとっては、預保法改正法案の提案は大きな意味を持つ。というのは、(一時国有化は想定されていないとはいえ、)これまでは預金取扱金融機関のみを対象としてきた、公的資金注入の対象に新たに加えられ得ることになるためである。
◆預保法改正法案は、公布日から9ヶ月以内で政令で定める日から施行される予定である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
自己資本比率規制における内部格付手法の影響
内部格付手法採用行は自己資本比率の分母を7割程度に圧縮
2025年03月10日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
-
SFDRのQ&A、9条ファンドの要件緩和へ
「格下げ」のトレンドは終焉し、パッシブ・ファンドが増加するか
2023年05月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日