2015年07月29日
サマリー
◆2015年5月1日、会社法改正法が施行され、株式会社の新たな機関設計として「監査等委員会設置会社」が導入された。これは、監査役や監査役会がなく、代わって、取締役を構成員(過半数は社外取締役)とする監査等委員会が設置される機関設計である。
◆2015年6月26日現在、監査等委員会設置会社への移行(又は移行予定)を開示した上場会社は189社確認された。このうち、東証1部上場会社が98社と半数以上を占めている。その一方、コーポレートガバナンス・コードについて基本原則のみが「コンプライ・オア・エクスプレイン」の対象とされるジャスダック上場会社も46社含まれる。
◆監査等委員会設置会社制度導入の目的の一つとして、「社外取締役の活用」が挙げられる。確かに、監査等委員会設置会社への移行に伴い、社外取締役の人数は、移行前(平均0.48人)と比較して、移行後(平均2.72人)は大きく増加している。もっとも、社外役員(社外取締役+社外監査役)全体の人数で見ると、移行前(平均2.81人)よりも、むしろ、若干、減少している。
◆加えて、監査等委員である社外取締役が全員、移行前には社外監査役であった会社が53.3%確認できることなどからすれば、単に、従来の社外監査役が、(監査等委員である)社外取締役に「横滑り」しただけの会社も多数あることが推測される。
◆監査等委員会設置会社制度の特徴の一つとして、取締役会に付議すべき議案を減らし、いわゆるモニタリング・モデルの取締役会を指向できることが挙げられる。確かに、大半(85.6%)の会社において、重要な業務執行の決定を取締役に委任することができる旨の定款変更が行われていることが確認できた。もっとも、移行前後の役員数(取締役+監査役)の変動が、±1人におさまる会社も多く(79.4%)、いわゆるモニタリング・モデルを前提とした役員構成の「スリム化」には、必ずしもつながってはいないようだ。
◆監査等委員会の構成は、社外取締役2人、社内取締役1人の3人構成とする会社が多い。社外取締役の属性としては、「他の社の出身者」が半数以上であるが、いわゆる士業(弁護士、公認会計士、税理士)の者も多い。
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