サマリー
◆2025年10月1日から始まった米連邦政府機関の一部閉鎖に伴い、BLSの雇用統計は2カ月連続で公表が見送られてきた。政府閉鎖は11月12日に終了し、統計公表の再開が見込まれるが、現時点で雇用統計の具体的な公表日時は示されていない。景気や金融政策を判断する上で、雇用統計の空白を埋めるためにも、他の雇用関連指標への注目度は引き続き高い。
◆本稿では、民間データを中心とした雇用関連指標を基に、雇用統計の注目指標である雇用動向、失業動向、賃金動向について分析を行った。端的にまとめれば、雇用者数は減速、失業率は上昇、賃金上昇率は減速を示しており、従来の雇用環境の緩やかな悪化というトレンドから大きな変化はない。先行きに関しては、失業率に先行するWarn Noticeが示すように目先は失業率が上昇しやすい環境が続くとみられる。他方で、NFIB雇用計画や事前解雇通知が示唆するように、その後は雇用環境の悪化が一巡し、2026年以降には回復傾向へと転じることも想定される。
◆雇用環境を基に個人消費を考えると、短期的には雇用環境の悪化が家計所得の伸びを抑制し、個人消費を下押しする公算が大きい。足元で本格化しつつある年末商戦も、売上の伸び悩みが予想される。年末商戦前後の変動を過ぎた後は、雇用環境の底入れやトランプ減税2.0の効果発現に沿って、家計の所得状況も改善しやすいだろう。
◆また、金融政策については、12月のFOMCでの0.25%ptの利下げについてFOMC参加者内でも実施と様子見で見解が分かれている。短期的には雇用環境が悪化しやすいことから、市場が織り込む利下げ確率は7割弱となっている。仮に様子見となれば、市場にとってはサプライズとなろう。2026年に関しては、市場が合計で0.7%pt程度の利下げを織り込んでいる。ただし、雇用環境の回復傾向への転換や、インフレの再加速とその後の高止まりリスクがある中で、市場が織り込むほどの利下げペースが可能かは慎重な見方が必要だ。雇用回復やインフレ再加速を契機とした利下げ期待の後退には注意を要する。
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