サマリー
◆米国経済の屋台骨である個人消費に関して、追加関税措置を契機とした駆け込みの反動が一巡しつつある。個人消費の減速が反動減に留まらず、なおも落ち込むか否かが米国経済の先行きを巡るポイントといえる。
◆これまでは家計の所得増によって個人消費が下支えされてきたが、追加関税措置によるコスト上昇を受け、企業が労働投入を拡大することは当面難しい。また、実質賃金上昇率も減速する公算が大きいことから、家計の所得増は今後楽観視できないだろう。こうした中で、2025年に入り、伸びが鈍化してきた消費性向が回復に転じる、つまりは消費意欲の高まりが個人消費の急激な腰折れを回避する上で重要となる。
◆足元で消費者センチメントは上昇したが、継続的に回復できるか否かは、追加関税措置の動向次第だろう。トランプ大統領に対する世論の不満が、追加関税措置を強化する上でのハードルとなり得ると考えられる。世論の経済に対する不満の高まりを背景に、一部の共和党議員もトランプ大統領に反発するような動きを見せている。相互関税の上乗せ税率適用再開といった追加関税措置の再強化はしにくい環境にあると考えられる。
◆一方、トランプ大統領は“TACO”(“Trump Always Chickens Out(=トランプはいつもビビッて取りやめる)”の頭文字を取った略語)と揶揄されたことに対する報復のように、鉄鋼・アルミニウム製品に対する関税率を引き上げた。足元では、一部の民主党議員などによって新たな政治スローガンとして“TACO”を活用しようとする動きも見られる。トランプ大統領を過度に刺激せずにいられるかが追加関税措置の再強化を回避する上でも重要となろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国経済見通し 利下げ再開後の注目点は?
景気下振れリスクが懸念される時こそ、インフレ動向を注視すべき
2025年09月24日
-
FOMC 0.25%ptの利下げを決定
先行きの利下げペースに関しては予想がばらつく
2025年09月18日
-
非農業部門雇用者数は前月差+2.2万人
2025年8月米雇用統計:雇用環境の悪化が継続し、利下げが近づく
2025年09月08日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日