FOMC 金利は据え置き、QTはペースダウン

景気下支えかインフレ抑制か、注目は期待インフレ率

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2025年03月21日

  • 経済調査部 主任研究員 矢作 大祐
  • ニューヨークリサーチセンター 研究員(NY駐在) 藤原 翼

サマリー

◆2025年3月18日・19日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジが4.25-4.50%と、2会合連続での据え置きとなった。他方で、今回の会合ではバランスシートの縮小(QT)ペースを4月から減速することが決定された。具体的には、国債の減額キャップが毎月 250 億ドルから毎月50億ドルへと変更された。

◆今回のFOMCで公表されたFOMC 参加者による経済見通し(SEP)では、実質GDP成長率は下方修正幅が大きい一方、失業率については小幅な悪化に留まり、インフレ率は関税の影響で2025年に高止まりするとのシナリオが示された。こうしたSEPのもとで、FOMC 参加者の FF 金利見通し (ドットチャート)については、2025年内の利下げ予想の中央値が合計0.5%ptで据え置かれた一方、ドットチャートの形状がややタカ派的になった。FOMC参加者の中で追加関税措置によるインフレ再加速への警戒感が強いことを示唆している。

◆他方で、パウエルFRB議長の記者会見では、景気への配慮を示しており、インフレ再加速への警戒感とのバランスをとったといえる。先行きの金融政策運営において、FOMCが景気の下支え(金融環境を緩和)とインフレ抑制(金融環境を引き締め的に維持)のどちらを重視するかは、期待インフレ率の動向がポイントになるだろう。FRBは当面はインフレ抑制に対する厳格な姿勢を維持することで期待インフレ率を安定的に推移させ、年央から年後半にかけての利下げ余地を確保することが想定されよう。

◆QTのペースの減速に関しては、政府債務上限問題による金融環境の悪化を予防するための対応といえる。また、追加関税措置等をめぐって不確実性が高い中で、金融ストレスによってFRBの政策判断の余地を狭められることを避けるという意味合いもあるだろう。他方で、足元のQTのペースの減速は、新規の国債発行が停止されていることとも相まって、米10年債タームプレミアムを下押しする可能性がある。金利低下は景気の下支えとなる一方、インフレ再加速のリスクを高め得る点には注意を要する。

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