サマリー
◆大統領選挙で勝利したトランプ氏は、11月25日に中国・メキシコ・カナダに対する追加関税措置をSNS上で発表した。具体的には、中国からのすべての輸入品に対して既存の追加関税措置に加えて10%の上乗せ関税を、そして、メキシコ・カナダからのすべての輸入品に対しては、新規に25%の追加関税措置を課すという内容となっている(以下、トランプ関税2.0)。
◆トランプ関税2.0が実施される場合、関税コスト(関税収入/輸入額)は2024年9月時点の約2.7%から合計で10%程度まで上昇すると試算される。米国は中国・メキシコ・カナダから衣食住に関わる品目を多く輸入しており、企業が関税コストを吸収しきれなければ、最終物価に転嫁することとなり、米国消費者の負担増につながりやすいと考えられる。
◆また、米国の経済面の影響を試算すると、最大でGDPが▲2.16%、インフレ率(CPI上昇率)が+1.56%ptとなる。選挙前に主張されていた対中輸入に60%、その他の全国・地域の輸入に10%の普遍関税を賦課するケースよりは抑制されるものの、大きな影響となり得ることには注意が必要だ。
◆なお、トランプ関税2.0の実現可能性を左右する要因としては、(1)制度上の制約、(2)共和党議員のスタンス、(3)トランプ新政権の方針が挙げられる。制度上の制約やトランプ新政権の方針を踏まえれば、中国に対する追加関税措置は避けがたいように映る。一方で、メキシコ・カナダに対する追加関税措置は不法移民や違法薬物問題の解消に向けた交渉が進めば、回避できる可能性があるだろう。また、一部の共和党議員の追加関税措置に対する慎重姿勢が、内容のマイルド化をもたらすことも想定される。
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