サマリー
◆2024年9月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月差+25.4万人と市場予想(Bloomberg調査:同+15.0万人)を大幅に上回った。さらに、雇用者数の過去分に関しても、7月分が+5.5万人、8月分が+1.7万人と合計+7.2万人の上方修正となった。失業率に関しては、同▲0.1%ptの4.1%と2カ月連続で低下(改善)し、市場予想(Bloomberg調査:4.2%)を下回った。さらに、非自発的失業や非自発的パートタイム労働者が減少したことも、雇用環境が底堅いことを示唆している。もっとも、雇用者数は減速感が強まった6-8月からの反動とも考えられる。雇用者数の3カ月移動平均を見ると、4カ月連続で同+10万人台と、好不調の目安とされる同+20万人を下回って推移していることに加え、労働時間も減少した。以上を踏まえれば、雇用環境の変化は現時点で急激ではなく、緩やかな悪化が継続しているとの評価を据え置く。
◆9月の雇用者数は大幅な伸びが見られたものの、先行きも同様のペースが続くとは限らない点には注意が必要だ。短期的には、9月末に米国南東部に上陸し甚大な被害をもたらした、ハリケーン「ヘリーン」がかく乱要因になり得る。また、金融政策を巡る不透明感が解消されつつあることは雇用者数の押し上げ要因となる一方で、目先は大統領選挙を巡る不透明感によって企業は新規雇用に積極化するというよりは様子見を続けることが想定される。そして、バイデン政権の移民規制により不法移民の流入数が減少傾向にあることは、雇用者数の伸びを抑制する可能性がある。もっとも、不法移民の流入数が減少すれば、労働供給の拡大を起因とした失業率の上昇も起きにくくなることも考えられよう。
◆金融政策運営について、9月17-18日のFOMC後の記者会見でパウエルFRB議長は、先行きの政策決定はデータ次第とし、景気が堅調なもとで高インフレが続く場合は利下げペースを緩め、労働市場が悪化したり、インフレがさらに速いペースで減速したりする場合は利下げペースを速めるとした。FOMC参加者による失業率の予想中央値は、2024年第4四半期が4.4%であり、9月の4.1%からは距離がある。9月の雇用統計は、雇用環境は堅調さを維持しておりFRBは焦っていないという、上記のパウエル議長の見解を裏付ける結果だったといえる。利下げペースは今後のデータ次第ではあるものの、足元の雇用環境を踏まえれば、直近のドットチャートが想定するような緩やかなペース(2024年内残り2回のFOMCで合計0.50%ptの利下げ)がメインシナリオとなろう。
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