サマリー
◆9月17日・18日のFOMCでは、4年6カ月ぶりとなる利下げが決定された。利下げ幅は0.50%ptと、従来は景気悪化時に実施されたことが多い大幅なものとなった。パウエル議長はFOMC後の記者会見で、大幅利下げは後れを取らないようにするためのコミットメントと述べたように、雇用環境の一段の悪化を未然に防ぐための判断だったといえる。
◆今回のFOMCで0.50%ptの利下げを決断した一方、先行きに関しては大幅利下げの予想が少なくなっており、利下げ幅の判断に関しては曖昧さが残る。失業率が予想以上に上昇すれば、大幅利下げの可能性は高まるが、インフレ率が高止まりすれば、大幅利下げの可能性は低下する。最大のリスクシナリオは失業率が予想以上に上昇する一方で、インフレ率が高止まりするような事態で、FOMC参加者の中でも意見が割れることになり、市場参加者の思惑も振れやすくなろう。
◆2025年に関しては、ドットチャート(中央値)によれば、合計1.00%ptの利下げが予想されている。これは、四半期ごとに0.25%ptの利下げで実現できるペースだ。2025年も利下げペースはデータ次第といえるが、2025年1月にハリス氏であれ、トランプ氏であれ、新大統領が就任することから、米国政治・経済を巡る先行きの不透明感は強い。トランプ氏が掲げる追加関税措置や、ハリス氏が掲げる食品価格つり上げ禁止はインフレ率を押し上げる可能性があり、利下げペースも影響を受け得るだろう。
◆利下げに伴う景気の下支え効果に関しては、企業マインドは2025年上半期から、雇用関連指標は2025年下半期から回復が本格化することが見込まれる。大幅な景気悪化を避けられれば、企業マインドや雇用関連指標の回復本格化のタイミングは早まり、回復ペースも速くなりやすい。ただし、今回の利下げ開始時期は大統領選挙と重なっている点は注意が必要だ。とりわけ現職の大統領が変わるような大統領選挙の場合、企業の様子見姿勢が続くことで、景気の回復ペースが遅延したり、緩やかになったり可能性がある。大統領選挙などによる不透明感が、利下げのペースだけでなく、その効果の発現タイミングやペースに関しても影響を与え得るといえよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
日本経済見通し:2025年1月
2025~34年度における経済財政・金利・為替レートの中期見通し
2025年01月24日
-
2025年、インドの消費回復の行方は?
都市部中間層の消費回復がカギ。2/1発表予定の予算に期待
2025年01月23日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言方針改定
2025年以降の株主総会に適用する助言方針改定はほぼ既報の通り
2025年02月04日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
日本経済見通し:2025年1月
2025~34年度における経済財政・金利・為替レートの中期見通し
2025年01月24日
2025年、インドの消費回復の行方は?
都市部中間層の消費回復がカギ。2/1発表予定の予算に期待
2025年01月23日
グラス・ルイスの議決権行使助言方針改定
2025年以降の株主総会に適用する助言方針改定はほぼ既報の通り
2025年02月04日