サマリー
◆2023年12月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+21.6万人と市場予想(Bloomberg調査:同+17.5万人)を上回り、前月から加速した。失業率についても前回から横ばいの3.7%と市場予想(Bloomberg調査:3.8%)を下回る(良い)結果となった。また、賃金に関しては、サービス部門の前月比の伸びが加速するなど、労働需給のタイトさは続いており、賃金上昇圧力は根強い。他方で、雇用者数については過去分が下方修正されており、3カ月移動平均で見ると前月から減速し、2021年1月以来の低水準となった。総じてみれば、雇用環境は緩やかに悪化しつつも、雇用者数の伸びが好不調の境目となる20万人を超えたことや、他の雇用指標を見ても急激な悪化を示していないことを踏まえれば、依然として底堅いという評価となろう。
◆金融政策運営に関して、1月3日に公表されたFOMC議事要旨では、市場が期待するような早期利下げの可能性は言及されなかった。むしろ、インフレ率の持続的な減速が明確になるまでは、引き締め的な金融政策を維持する必要性を指摘している点は、市場に対して早期利下げを期待しすぎぬよう釘をさしたとも捉えられるだろう。もっとも、FOMC参加者は景気やインフレの先行きに関して不確実性が高いと捉えており、金融政策運営の先行きは結局のところデータ次第である。今回の雇用統計を踏まえれば、雇用環境が緩やかな悪化傾向を続けている一方で、単月の雇用者数の伸びが底堅く、賃金上昇圧力も根強いことから、FOMC参加者は当面利上げも利下げもせずに様子見スタンスを継続すると考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
-
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
-
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日