サマリー
◆2023年9月19日・20日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)における注目点は、2023年内の追加利上げの可能性と、2024年以降の利下げのタイミングであった。ドットチャート(FOMC参加者のFF金利見通し)の中央値によれば、2023年末は5.6%、2024年末が5.1%となった。2023年に関しては、前回(6月13日・14日)のドットチャートから据え置きとなり、残り2会合で0.25%ptの追加利上げが見込まれている。2024年に関しては、前回のドットチャートで合計1.00%ptの利下げが予想されていたが、合計0.50%ptへと利下げ幅が縮小し、利下げのタイミングが後ずれする可能性を示唆するものとなった。市場の想定と比べて、今回のFOMCはタカ派的な印象が強いといえる。
◆もっとも、追加利上げも利下げタイミングの先送りも、FOMC参加者でコンセンサスを得ているというよりは、オプション的な意味合いがあるかもしれない。結局のところ、金融政策の先行きは、インフレの減速と労働需給のタイトさの緩和の進捗次第といえる。一定の進捗は見られるものの、足下で従業員の待遇改善を求める動きが活発化しており、賃金上昇率が下がりにくくなる恐れがある点は懸念材料だ。UAW(全米自動車労働組合)によるストライキなど、企業の生産活動が混乱することになれば、財価格の上昇をもたらす可能性もある。インフレの高止まり懸念が強まれば、追加利上げや利下げ先送りといったオプションは、より現実味を帯びることになる。市場参加者もハト派的になるのは時期尚早だろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
非農業部門雇用者数は前月差+2.2万人
2025年8月米雇用統計:雇用環境の悪化が継続し、利下げが近づく
2025年09月08日
-
米国経済見通し 景気下振れの懸念強まる
雇用環境が悪化傾向を示す中、屋台骨の個人消費は楽観しづらい
2025年08月22日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日