米国経済見通し まだハト派にはなれない

従業員の待遇改善を求める動きが活発化、インフレ圧力は高止まりか

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2023年09月22日

サマリー

◆2023年9月19日・20日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)における注目点は、2023年内の追加利上げの可能性と、2024年以降の利下げのタイミングであった。ドットチャート(FOMC参加者のFF金利見通し)の中央値によれば、2023年末は5.6%、2024年末が5.1%となった。2023年に関しては、前回(6月13日・14日)のドットチャートから据え置きとなり、残り2会合で0.25%ptの追加利上げが見込まれている。2024年に関しては、前回のドットチャートで合計1.00%ptの利下げが予想されていたが、合計0.50%ptへと利下げ幅が縮小し、利下げのタイミングが後ずれする可能性を示唆するものとなった。市場の想定と比べて、今回のFOMCはタカ派的な印象が強いといえる。

◆もっとも、追加利上げも利下げタイミングの先送りも、FOMC参加者でコンセンサスを得ているというよりは、オプション的な意味合いがあるかもしれない。結局のところ、金融政策の先行きは、インフレの減速と労働需給のタイトさの緩和の進捗次第といえる。一定の進捗は見られるものの、足下で従業員の待遇改善を求める動きが活発化しており、賃金上昇率が下がりにくくなる恐れがある点は懸念材料だ。UAW(全米自動車労働組合)によるストライキなど、企業の生産活動が混乱することになれば、財価格の上昇をもたらす可能性もある。インフレの高止まり懸念が強まれば、追加利上げや利下げ先送りといったオプションは、より現実味を帯びることになる。市場参加者もハト派的になるのは時期尚早だろう。

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