米銀行不安から見る新たな金融リスクの所在

『大和総研調査季報』2023年夏季号(Vol.51)掲載

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サマリー

今般の銀行不安の特徴を見ると、大口預金の多さなど破綻銀行固有の問題もある一方、中小銀行に対する規制網の不十分さや債券価格の下落による損失拡大リスクの高まりといった米銀行セクター全体が抱える問題もある。こうした中、従来の大銀行に対する規制強化や、今般の銀行破綻後の迅速な流動性供給、預金保険の拡大などを通じて金融システム全体への混乱の波及を回避できていることは、政府の対応として評価できよう。また、中小銀行に対する将来の銀行不安のリスク軽減に向けた規制強化の動きが見られる。

しかし、こうした対応策だけで銀行不安のすべてが解決できるわけではない。新しいリスクとして注目されるのは、景気減速に伴い銀行資産の質の悪化が進み、信用不安へと危機の段階が上がり得ることや、市場を含めた混乱が広がり得ることといった銀行不安の深化が挙げられる。また、規制強化などの危機予防策や、預金保険の拡充などの危機後の対応策に関しても、実現には政治的な困難があることが不安要素といえる。最後に、テクノロジーの進化によって危機に転じるまでの時間が短くなっている点は、日本の金融機関がリスクの所在を再確認する必要を示唆していよう。

大和総研調査季報 2024年春季号Vol.54

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