2023年07月20日
サマリー
今般の銀行不安の特徴を見ると、大口預金の多さなど破綻銀行固有の問題もある一方、中小銀行に対する規制網の不十分さや債券価格の下落による損失拡大リスクの高まりといった米銀行セクター全体が抱える問題もある。こうした中、従来の大銀行に対する規制強化や、今般の銀行破綻後の迅速な流動性供給、預金保険の拡大などを通じて金融システム全体への混乱の波及を回避できていることは、政府の対応として評価できよう。また、中小銀行に対する将来の銀行不安のリスク軽減に向けた規制強化の動きが見られる。
しかし、こうした対応策だけで銀行不安のすべてが解決できるわけではない。新しいリスクとして注目されるのは、景気減速に伴い銀行資産の質の悪化が進み、信用不安へと危機の段階が上がり得ることや、市場を含めた混乱が広がり得ることといった銀行不安の深化が挙げられる。また、規制強化などの危機予防策や、預金保険の拡充などの危機後の対応策に関しても、実現には政治的な困難があることが不安要素といえる。最後に、テクノロジーの進化によって危機に転じるまでの時間が短くなっている点は、日本の金融機関がリスクの所在を再確認する必要を示唆していよう。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国経済見通し 景気下振れの懸念強まる
雇用環境が悪化傾向を示す中、屋台骨の個人消費は楽観しづらい
2025年08月22日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
GENIUS法、銀行とステーブルコインの邂逅
ステーブルコインは支払決済手段として普及するのか?
2025年08月19日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日