サマリー
◆2023年1月の雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びが前月差+51.7万人と市場予想を大幅に上回った。また、失業率も3.4%と前月からさらに低下したことから、雇用環境の堅調さが継続していることを示す結果となった。新規失業保険申請件数からも、足下まで雇用環境に大幅な悪化の傾向は見られない。
◆他方で、注目の賃金上昇率は前月比及び前年比で減速した。労働供給が拡大していない点は引き続き課題だが、雇用環境が堅調でありながら賃金上昇率で測るインフレ上昇圧力が低下した点は、米国経済がソフトランディングへと向かうことを期待させる結果であったといえる。
◆金融政策運営に関して、1月31日・2月1日に開催されたFOMCで利上げ幅が0.25%ptに縮小された。パウエルFRB議長は、家賃を除くコアサービス価格指数の低下が利上げ停止に向けて重要との認識を示しており、連動する賃金上昇率が低下したことは、利上げ停止に向けて一歩前進したといえよう。
◆他方で、足下まで続く雇用環境の堅調さは、緩和的となってきた金融環境と相まって、需要を押し上げると考えられる。今回の雇用統計の結果だけで判断するのは尚早ではあるが、需要の押し上げによってインフレの減速ペースが緩やかになったり、再び上昇に転じる兆しが見られれば、FRBがタカ派的なスタンスを強める可能性があるだろう。
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