サマリー
◆2023年1月31日・2月1日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジが、従来の4.25-4.50%から4.50-4.75%へと0.25%pt引き上げられた。多くのFOMC参加者が事前に、今回のFOMCでの0.25%ptの利上げを支持することを示唆していたことから、市場にとっては想定通りの結果であったといえる。
◆先行きに関して、市場参加者の中では、3月のFOMCでの0.25%ptの利上げをもって利上げ停止との予想が主流となっている。しかし、今回のFOMC声明文で利上げの継続という表現が維持されたように、FOMC参加者は早期の利上げ停止には否定的なようである。コアPCE価格指数の3カ月前比年率及び6カ月前比年率の3%割れが利上げ停止に向けた判断基準の一つといえるが、3月のFOMC時点での達成はハードルが高く、5月のFOMCでの0.25%ptの利上げをもって利上げ停止をベースシナリオと置くべきだろう。
◆また、パウエルFRB議長は、家賃を除くコアPCEサービス価格が明確な減速傾向を示していない点を利上げ継続の根拠としている。家賃を除くコアPCEサービス価格と連動する賃金上昇率は減速傾向を示しているが、労働需給はタイトなままである。パウエル議長は、FOMCはやるべきことが多く残っていると述べており、利上げを早期に停止するよりは、利上げを継続するバイアスの方が強いと考えるべきだろう。
◆市場の期待が高い2023年内の利下げの可能性に関しては、パウエル議長は従来通り否定的な姿勢を示した。パウエル議長にとって、利上げ停止時期に関しても不確実性が残る中で、利下げ開始の議論は時期尚早ということだろう。また、2023年内の利下げの開始を市場が期待する中で、足下では金融環境の緩和が進んでいる。インフレが落ち着くまではタイトな金融環境を維持したいFOMCにとっては、金融環境がさらに緩和化すればタカ派的なスタンスを強めざるを得なくなるだろう。
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