サマリー
◆2021年8月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+23.5万人、失業率は同▲0.2%ptの5.2%となった。失業率は市場予想通りとなったが、新型コロナウイルスの感染状況の悪化によってレジャー・娯楽が急減速し、非農業部門雇用者数は市場予想(Bloomberg調査:非農業部門雇用者数同+73.3万人)を大きく下回るネガティブサプライズであった。
◆予想通りであった失業率に関しても、レイオフや「業容縮小の影響」によるパートタイム就業者が増加するなど気がかりな点も多い。もっとも解雇は減少しており、賃金上昇率も高いことから、企業の採用意欲は依然高いと考えられる。失業保険の給付増額の期限が到来し、労働供給が増加することが想定される中でも雇用者数が伸びないということは、新型コロナウイルスの感染状況の悪化が労働者の職場復帰意欲を抑制しているということだろう。
◆感染者数の多い南部では新規感染者数がピークアウトの兆候を見せている点は、労働者の職場復帰に対する懸念が軽減される意味で雇用環境にとってもポジティブといえる。他方で、若年層の感染が増加している点は注意を要する。若年層の感染が拡大し、リモート授業へと変更されれば、子育て世代の職場復帰も先送りされることも考えられ、雇用環境の回復が進みにくくなるだろう。
◆今回の雇用統計の結果を受け、テーパリングの早期化(9月のFOMCでの公表)は考えにくい。他方で、失業率はテーパリングの先送り(2022年以降の開始)を示すほどの悪化ともいえず、現時点では年内開始をベースシナリオとして捉えるべきであろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
ソフトウェア投資の拡大は今後も続くのか
求められるIT人材の育成、中小企業への支援、行政のデジタル化
2024年04月25日
-
中国経済見通し:名目<実質、実感なき景気堅調
不動産不況に一段の長期化の懸念
2024年04月25日
-
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
大手生保は中長期の事業環境の変化に対応できるか
~本格化するビジネスモデル変革~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
複眼的思考へのヒント
2024年04月24日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日