サマリー
◆4月末で誕生100日となるバイデン政権のこれまでの取り組みを振り返ると、新型コロナウイルス対策や経済政策で成果を上げ、世論の支持も高いことから上々の立ち上がりといえる。こうした中、バイデン政権は3月末に肝いりのインフラ投資計画2.7兆ドルと、その財源として法人増税案を公表した。投資内容は典型的なインフラ投資にとどまらず、製造業への資金援助やケアワーカーに対する支援など多岐にわたる。法人増税案も法人税率の引き上げや米国の多国籍企業の海外子会社所得へのミニマム課税(GILTI)など対象は広範である。
◆民主党は7月初旬のインフラ投資計画・増税法案の成立を目指しているが、大規模な財政支出や増税に消極的な共和党との協働は困難といえる。そのため、当初のインフラ投資計画を2つに分け、議会通過を目指す動きもある。共和党は典型的なインフラ投資に賛同しており、共和党と協働できる部分に関しては超党派で、協働できない部分に関しては財政調整プロセスを活用して議会を通すことも想定される。
◆他方、議会が通過できたとしても、法人増税でインフラ投資計画を賄う場合、経済への悪影響が大きいとの試算もある。本来であれば、財源として他の歳出削減を通じた方が経済への悪影響は少ないが、増税は世論の支持もあり、バイデン政権にとってハードル低いのかもしれない。しかし、ビジネス界からは増税によって経済活動が抑制されると反対の声が上がっている。米国の分裂阻止を掲げるバイデン政権にとって、世論だけでなく企業や共和党も十分に考慮し、バランスの取れたインフラ投資計画を実現できるか、今後のバイデノミクスの行方を占う試金石といえよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国、設備投資費用の即時償却を復活・拡張
製造業・情報産業の新規投資、及び対米直接投資の増加要因か
2025年10月07日
-
米国経済見通し 利下げ再開後の注目点は?
景気下振れリスクが懸念される時こそ、インフレ動向を注視すべき
2025年09月24日
-
FOMC 0.25%ptの利下げを決定
先行きの利下げペースに関しては予想がばらつく
2025年09月18日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日