サマリー
◆2020年12月の雇用統計では、失業率は6.7%と11月から横ばいも、非農業部門雇用者数が前月差▲14.0万人と2020年4月以来8ヵ月ぶりの減少となった。米国における新型コロナウイルスの感染再拡大が進む中で、政府による規制強化が進み、人々は外出を抑制している。そのあおりを正面から受けたレジャー・娯楽の雇用者数が大きく減少したわけだが、その他の多くの業種では雇用者数は増加したことから、米国全体で雇用環境が悪化したと単純に評価するのはややミスリーディングであろう。
◆今後は、感染再拡大による悪影響が他の業種に及び、雇用環境全体が悪化するかが焦点となる。足下の新規失業保険件数が明確に増加していないことを考えれば、雇用環境が大きく悪化しているとは考えにくい。もっとも、新型コロナウイルス感染再拡大が収束するまでは、雇用環境が悪化するリスクは残ることから、雇用環境の回復が軌道に乗るのは、ワクチンの接種が進むと想定される2021年中頃が目途となるだろう。
◆短期的に雇用環境が悪化したとしても、失業保険の拡充(期間の延長と対象の拡大)や家計への現金給付(一人当たり最大600ドル)を含む追加支援(Coronavirus Response and Relief Act)が2020年末に成立し、セーフティネットが拡充されたことは個人消費にとって安心材料といえる。12月に雇用者数は減少したものの、こうした追加支援による下支えを踏まえれば、1月のFOMCで追加的な緩和措置が実施されるとは考えにくいだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
FOMC 様子見姿勢を強調
景気・インフレに加え、金融環境の変化が利下げのタイミングを左右
2025年05月08日
-
非農業部門雇用者数は前月差+17.7万人
2025年4月米雇用統計:景気への不安が高まる中で底堅い結果
2025年05月07日
-
米GDP 前期比年率▲0.3%とマイナスに転換
2025年1-3月期米GDP:追加関税を背景とした駆け込み輸入が下押し
2025年05月01日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日