サマリー
◆2019年10月の非農業部門雇用者数は前月差+12.8万人と、市場予想(Bloomberg調査:同+8.5万人)を上回った。今回の雇用統計に関しては、9月半ばに始まったGM従業員4.6万人によるストライキの影響が懸念されていたが、民間サービス部門を中心に雇用は拡大し、杞憂に終わった。また、過去分に関しても、大幅な上方修正がなされており、米国の雇用環境の堅調さを改めて感じさせる結果であったといえる。
◆家計調査による10月の失業率は、3.6%と依然として歴史的低水準を維持している。賃金に関しては、10月の平均時給は前月比+0.2%となり、市場予想(Bloomberg調査:同+0.3%)を下回る結果となった。賃金は今後も緩やかに上昇するという公算が大きいものの、賃金の上昇ペースが加速するには、サービス部門の平均時給の上昇ペースの再加速が必要となるだろう。
◆10月の雇用統計を総括すれば、一時的要因の影響はあったものの、雇用者数の増加などポジティブサプライズであったといえる。ただし、歴史的低失業率が続く中、雇用者数が伸びにくい状況にあることに変わりはない。また、米中貿易摩擦に代表される不確実性や、世界経済の成長鈍化が、製造業を中心に雇用の積極化の重石になりうることは、引き続きリスクといえる。以上から、今回の結果をもって、米国の雇用者数の増加ペースが加速するといった期待は禁物であろう。むしろ、雇用者数が伸びにくい中で、労働参加率の上昇といった雇用のすそ野の広がりや、賃金の上昇ペースの加速が進むか否かが引き続きポイントとなろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米GDP 前期比年率▲0.3%とマイナスに転換
2025年1-3月期米GDP:追加関税を背景とした駆け込み輸入が下押し
2025年05月01日
-
米国の州年金基金とビットコイン現物ETF
「戦略的ビットコイン準備資産」の実現により保有ニーズが高まるか
2025年04月25日
-
「トランプ2.0」における米国金融規制の展望
~銀行システム、暗号資産ビジネスと結合か~『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日