サマリー
◆議会共和党は上院、下院でそれぞれ可決された税制改革案を一本化した最終案を12月15日に公表した。最終案は米国時間19日にも下院で採決される見通しになっており、追って上院でも近日に採決されると伝えられている。議会で法案が可決されれば、その後大統領への送付、署名を以て、税制改革は正式に成立することになる。
◆超党派のNPO法人である、「責任ある連邦予算委員会」がまとめた、複数の米国シンクタンクによる税制改革の効果の試算を見ると、今後10年間の実質GDP成長率を毎年平均+0.004~0.31%pt押し上げるとされている。税制改革のうち、特に法人税率の引き下げが企業収益に与える影響は決して小さくないとみられるが、GDPを押し上げる効果は限定的に留まると見込まれる。
◆2016年11月の大統領選挙以降、トランプ政権による経済政策の中心的話題は税制改革であった。また、今回の税制改革には、共和党による念願であったオバマケアの修正(保険加入義務の廃止)も盛り込まれたため、改革の効果の是非はともかく、政権および共和党は、2018年中間選挙に向けた大きなアピール材料を得ることになる。
◆今後の政権および共和党による中間選挙に向けたアピール材料として、大きな経済効果が見込まれる政策が追加的に打ち出される可能性は低いだろう。政権発足当初、期待感が大きかった大型インフラ投資については、政権として現在はトーンダウンしていることに加えて、減税による連邦財政の大幅悪化が見込まれる中で、政府による大規模な支出は難しい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
米GDP 前期比年率▲0.3%とマイナスに転換
2025年1-3月期米GDP:追加関税を背景とした駆け込み輸入が下押し
2025年05月01日
-
米国の州年金基金とビットコイン現物ETF
「戦略的ビットコイン準備資産」の実現により保有ニーズが高まるか
2025年04月25日
-
「トランプ2.0」における米国金融規制の展望
~銀行システム、暗号資産ビジネスと結合か~『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日